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De novo変异の統合的ビッグデータ解析により 自閉スペクトラム症の新たな生物学的知見を獲得

2018.01.17
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De novo変异の統合的ビッグデータ解析により 自閉スペクトラム症の新たな生物学的知見を獲得

~『Cell Reports』に掲載~

横浜市立大学学術院医学群 遺伝学 高田篤講師、三宅紀子准教授、松本直通教授らと、神奈川県立こども医疗センター 鶴崎美徳主任研究員及び多施设共同研究グループ(後述)は、自閉スペクトラム症患者でみられるde novo変异*1の统合的ビッグデータ解析を行い、新规原因遗伝子候补の同定、疾患関连脳部位の特定、de novo変异によって傷害される遺伝子を調節する化合物の発見などに成功しました。
研究成果のポイント&苍产蝉辫;
〇日本人自閉スペクトラム症患者を含む262家系で認めた突然変异(de novo変异)を網羅的に解析
〇欧米の研究で得られていた结果を再现し、de novo変异が人種を超えて自閉スペクトラム症のリスクに寄与することを証明
〇日本人データと欧米でのデータを组み合わせ(合计4,244家系)、さらに脳内での遗伝子発现データを用いるなどして、de novo変异の統合的ビッグデータ解析を施行
〇自闭スペクトラム症の病态に関わる脳部位や分子経路の新たな知见を获得
ATP2B2などの新规原因遗伝子候补を同定し、またde novo変异によって傷害される遺伝子を調節する化合物を発見

研究の背景

自闭スペクトラム症は、社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害と、限定された反復する様式の行动、兴味、活动を特徴とする神経発达症です。有病率はおよそ1词2%で、男性に多いと报告されています。これまでの疫学研究、遗伝研究から、ゲノム因子が自闭スペクトラム症の発症に関わることが知られています。特に近年、次世代シーケンサー*2を用いたde novo変异の網羅的解析から、新規原因遺伝子の同定など重要な知見が得られていますが、これらの研究は主に欧米で行われたものであり、日本人を対象とした研究は小規模なものしかありませんでした。

研究の内容

共同研究チームは、日本人自闭スペクトラム症患者とその両亲からなる262家系のエクソーム解析*3を行い、両親にはなく患者にのみある変异をde novo変异として同定し、その性質について解析を行いました。その結果、遺伝子がコードするタンパク質の配列を変化させ、遺伝子機能を傷害するタイプのde novo変异(以下、機能的de novo変异とよぶ)が、健常対照群と比べて自閉スペクトラム症患者で多いという、先行研究で観察されていた結果が確認されました。さらに、これらの機能的de novo変异によって傷害される遺伝子が関わる生物学的経路も、日本人と欧米人で共通していました。そのためde novo変异は、人種を超えて自閉スペクトラム症の発症に寄与することが明らかになりました。
続いて、今回新たに取得した日本人データと先行研究のデータを组み合わせ(合计4,244家系)、さらに网罗的な脳内での遗伝子発现データを用いるなどして、统合的ビッグデータ解析を行いました。その结果、自闭スペクトラム症との関连が既に报告されていた分子経路(ヒストン修饰*4、シナプス*5机能など)や、脳部位(大脳皮质)について确认するとともに、アデノシン叁リン酸と结合する遗伝子のグループや、小脳?线条体といった脳部位が自闭スペクトラム症に関与することを明らかにしました。

また、机能的de novo変异を複数の患者で認められる遺伝子の解析からは、細胞膜においてカルシウムを輸送するポンプの役割を担うタンパク質をコードするATP2B2などを、有力な自闭スペクトラム症の新规原因遗伝子候补として同定しました(図)。
図:各遗伝子に认めた机能的de novo変异の数を統計的に検討して得られたP値(この値が小さいほど、観察された機能的de novo変异の数が期待値よりも多いことを示す)をプロットした結果。日本人データを含めた場合、含めない場合の両方を検討し、縦軸に日本人データを含めたときのP値(-log10変換したもの)、横軸に含めないときのP値が示されている。破線は、統計学的に有意な水準(有意確率5%;調べた遺伝子の数に伴う多重検定の問題を考慮した値)を示している。すなわち、ピンク色の背景で示した部分に含まれる、日本人データを含めないときにはP値が有意でないが、含めると有意になる10遺伝子(ATP2B2など)は、新规原因遗伝子候补といえる。

今后の展开

さらに、机能的de novo変异によって傷害される遺伝子の機能を全体的に変化させる化合物のスクリーニングを行ったところ、妊娠中の服薬が自閉スペクトラム症のリスク因子となることが既に知られているバルプロ酸*6が、これらの遗伝子の発现量を全体として下げることが分かりました。逆に、ジゴキシン、プロシラリジンなどの强心配糖体*7は、これらの遗伝子の発现を上げる作用を共通して有することが明らかになりました。今后その効果の研究がさらに进めば、新たな治疗法の开発につながることが期待されます。

多施设共同研究グループ

名古屋大学 尾崎紀夫教授らのグループ、浜松医科大学 森則夫教授と弘前大学 中村和彦教授らのグループ、広島市こども療育センター 平木洋子医師、大阪大学 橋本亮太准教授らのグループ、名古屋市立大学 斎藤伸治教授らのグループ、九州大学 酒井康成准教授らのグループ、昭和大学 加藤光広講師(前山形大学)らのグループ、自治医科大学 小坂仁教授らのグループ、横浜市立大学 武下草生子診療講師、久留米大学 松石豊次郎前教授らのグループ、理化学研究所 吉川武男シニアチームリーダーらのグループ、加藤忠史シニアチームリーダーらのグループ等を含む。

用语説明

*1De novo変异
de novo“は、「新たに」という意味のラテン語。通常、子供は両親から半分ずつゲノム配列を受け継ぐが、DNA複製時のエラーなどが原因となって、子のゲノムに親が持たない新たな変异が生じる場合がある。これを「de novo変异」という。
*2次世代シーケンサー
大量の短い顿狈础断片を并列に解析し、高速に配列を决定することができる装置。
*3エクソーム解析
ゲノム中のタンパク质配列をコードする部分(エクソン)の顿狈础配列を、次世代シーケンサーを用いて网罗的に解析する方法。
*4ヒストン修饰
顿狈础分子をコンパクトに折りたたむために必要なタンパク质であるヒストンに対する様々な化学修饰(メチル化、アセチル化など)のこと。ヒストン修饰によって顿狈础の折りたたみ状态が変化し、遗伝子の発现が调节されることが知られている。
*5シナプス
神経细胞间の接合部位とその构造のこと。シナプス前部の神経细胞から放出される神経伝达物质をシナプス后部の神経细胞が受け取ることなどによって情报が伝达される。
*6バルプロ酸
抗てんかん薬や双极性障害の治疗薬として用いられる有机化合物。妊娠中の使用により、子の自闭スペクトラム症の発症频度が高まることが知られている。
*7强心配糖体
心臓の収缩力を増强する作用をもつステロイド配糖体の総称。うっ血性心不全の治疗などに用いられる。


掲载论文

Integrative Analyses of De Novo Mutations Provide Deeper Biological Insights into Autism Spectrum Disorder
Takata et al., Cell Reports 22, 1–14 January 16, 2018, https://doi.org/10.1016/j.celrep.2017.12.074


※本研究は、『Cell Reports』に掲載されます。(米国東部時間1月16日正午付:日本時間1月17日午前2時付オンライン)
※本研究は、国立研究開発法人日本医疗研究開発機構(AMED)「脳科学研究戦略推進プログラム(融合脳)」、厚生労働省、文部科学省、科学技術振興機構、日本学術振興会、武田科学振興財団、横浜総合医学振興財団、林女性自然科学者研究助成基金の支援を受けて行われました。

お问い合わせ先

(本資料の内容に関するお问い合わせ)
公立大学法人横浜市立大学学术院医学群遗伝学
教授松本直通
讲师高田篤
TEL:045-787-2606FAX:045-786-5219
E-mail:naomat@yokohama-cu.ac.jp(松本)
             atakata@yokohama-cu.ac.jp(高田)

(取材対応窓口、詳細の资料请求など)
公立大学法人横浜市立大学 研究企画?产学连携推進課長渡邊誠
TEL:045-787-2510FAX:045-787-2509
E-mail:kenki@yokohama-cu.ac.jp

(础惭贰顿の事业について)
国立研究開発法人日本医疗研究開発機構 戦略推進部脳と心の研究課
TEL:03-6870-2222FAX:03-6870-2244
E-mail:brain-pm@amed.go.jpURL:

&濒迟;文部科学省「脳科学研究戦略推进プログラム」&驳迟;
高齢化、多様化、复雑化が进み、様々な现代社会において、その克服に向けて、科学的?社会的意义の高い脳科学に対する社会的な関心と期待が急速に高まっています。このような社会的状况を鑑み、文部科学省では、『社会に贡献する脳科学』の実现を目指し、社会への応用を见据えた脳科学研究を戦略的に推进しています。
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