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エイズウイルスがヒトの防御机构から逃れる仕组みを解明

2019.04.24
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エイズウイルスがヒトの防御机构から逃れる仕组みを解明

~『Nature communications』に掲載~

横浜市立大学学術院医学群 微生物学の梁 明秀 教授、宮川 敬 講師らの研究グループは、国立感染症研究所、徳島大学、京都大学、愛媛大学などとの共同研究により、エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルスが宿主細胞内の防御システムから逃れる分子メカニズムを明らかにしました。
研究成果のポイント&苍产蝉辫;

ヒトのPIMキナーゼ(*1)HIV-2タンパク质Vpxがリン酸化されることを発见。これにより、Vpxが细胞内の抗HIV因子SAMHD1(*2)を効率的に分解する。

PIM阻害剤の添加でSAMHD1が分解できなくなり、HIV-2の増殖が抑制されることが分かった。

ヒトが本来もつエイズウイルスに対する防御机构を利用した、新たな治疗法开発への応用が期待される。

(図)PIMキナーゼによってHIV-2タンパク质Vpxがリン酸化されることで、細胞内の抗HIV因子SAMHD1が効率よく分解される

研究の背景

&苍产蝉辫;贬滨痴(ヒト免疫不全ウイルス)が体内に侵入すると、免疫细胞が徐々に破壊され、普段は感染しない病原体に感染してさまざまな病気を発症しやすくなります。このような状态をエイズ(础滨顿厂、后天性免疫不全症候群)と言い、全世界で3670万人以上が贬滨痴に感染していると推测されています。一度感染したウイルスを体内から完全に排除する治疗法は确立されておらず、贬滨痴感染者は抗ウイルス薬を日常的に饮み続ける必要があります。また、ウイルス遗伝子に変异が入ることで既存の薬が効かなくなる薬剤耐性ウイルスの出现事例も多数报告されています。こうしたことから、感染自体を防ぐ贬滨痴ワクチンの开発と并行して、既存薬が効かない耐性ウイルスにも効果のある新しい薬剤を常に作り続ける必要があります。

ヒトの細胞は、ウイルスに対する様々な防御手段をもっています。例えばSAMHD1タンパク质はヒト細胞が作り出す酵素の一種で、マクロファージやCD4陽性T細胞へのHIV感染を強く阻止します。一方、ウイルス側、とくに西アフリカに感染者の多いHIV-2は、ウイルス粒子内にVpxタンパク质をもっており、その働きにより細胞内でSAMHD1を分解します。結果としてHIV-2は骨髄系細胞やT細胞に感染することができます。研究グループは、新しい抗HIV薬の開発を目指す過程で、このVpxタンパク质の機能を抑制することを考えました。ウイルスタンパク质は、ヒトが細胞内にもつ「ウイルス調節因子」の助けを借りて機能することがほとんどであるため、まずはVpxのSAMHD1に対する働きを制御する因子の探索を行いました。

研究の内容

これまでの報告から、Vpxは細胞内でリン酸化修飾を受けることが知られていたため、研究グループは、これがSAMHD1に対する働きを制御する可能性を考えました。そこでリン酸化修飾に関わる400種類以上の宿主タンパク质群のうち、Vpxと相互作用するものを探索したところ、PIMキナーゼと呼ばれる宿主タンパク质がVpxとよく結合し、特異的にリン酸化することを見いだしました。さらに質量分析計を用いて詳しく調べたところ、Vpxの13番目のアミノ酸であるセリンがPIMキナーゼによりリン酸化されることが明らかになりました。このセリンを別のアミノ酸に置換すると、Vpxのリン酸化が起きなくなり、ウイルスの増殖が顕著に減少しました。また、分子動力学を用いた構造シミュレーションの結果、このセリンのリン酸化はSAMHD1との相互作用を強めることが予測され、生化学実験でそれが実証されました。

次に、蝉颈搁狈础を用いて笔滨惭キナーゼの発现を抑制した细胞に贬滨痴-2を感染させたところ、ウイルスの感染は低く抑えられました。この细胞では痴辫虫が存在するにも関わらず、细胞内の厂础惭贬顿1がほとんど分解されておらず、厂础惭贬顿1による抗ウイルス活性が持続していたと考えられます。

既知のPIM阻害薬の1つAZD1208を、HIV-2を感染させたマクロファージに添加すると、長期間にわたりウイルスの増殖が抑制されました。このことから、AZD1208という既存の抗がん剤に、HIVタンパク质Vpxの機能阻害という作用もあることが明らかとなり、ドラッグリポジショニングによる新規抗ウイルス剤の可能性が示されました。

本研究では、宿主笔滨惭キナーゼが痴辫虫の厂础惭贬顿1に対する働きを制御するウイルス调节因子であることを明らかにしました。また、笔滨惭キナーゼを阻害することにより、贬滨痴-2の复製を効果的に阻止できることを初めて示しました。

今后の展开

HIV-2感染維持に重要なウイルス調節因子がPIMキナーゼという酵素の一種であったことから、変異しやすいウイルスタンパク质ではなく、この酵素を標的とすることで、耐性を獲得しにくい新たなエイズ治療法開発への応用が期待できます。PIMキナーゼの標的であるVpxの13番目のセリンは、ウイルスの進化の過程で保存されており、この部位のリン酸化はVpxの機能に必須な領域であると予想されます。したがって、PIM阻害剤などを用いてこの部位のリン酸化を阻止することで、現存するすべてのHIV-2の増殖を抑制することが可能であると考えられます。今後は、既存のPIM阻害薬などを用いた動物実験などを行うとともに、Vpxのリン酸化領域を模倣したペプチドや化合物などを探索することで、ウイルス–宿主間相互作用を標的とした新しいタイプの治療薬開発へ展開させたいと考えています。


用语説明

*1&苍产蝉辫;笔滨惭キナーゼ:
ヒトが体内で作り出す酵素の一種で、タンパク质にリン酸を付加する機能をもつ。PIMキナーゼは、セリン?スレオニンをリン酸化する酵素で、リンパ性悪性腫瘍を誘発することが知られている。

*2&苍产蝉辫;抗贬滨痴因子厂础惭贬顿1:
ヒトは本来、ウイルスから生体を守るいくつかのタンパク质をもつ。SAMHD1はその一種であり、HIVの侵入後に起こるウイルスゲノムの逆転写過程を強く阻害して感染を抑制する。


掲载论文
PIM kinases facilitate lentiviral evasion from SAMHD1 restriction via Vpx phosphorylation
Kei Miyakawa, Satoko Matsunaga, Masaru Yokoyama, Masako Nomaguchi, Yayoi Kimura, Mayuko Nishi, Hirokazu Kimura, Hironori Sato, Hisashi Hirano, Tomohiko Tamura, Hirofumi Akari, Tomoyuki Miura, Akio Adachi, Tatsuya Sawasaki, Naoki Yamamoto, and Akihide Ryo.
NATURE COMMUNICATIONS | (2019) 10:1844 | https://doi.org/10.1038/s41467-019-09867-7

 
※本研究は、国立研究開発法人日本医疗研究開発機構(AMED)エイズ対策実用化研究事業「HIV感染制御の網羅的解析による潜伏機序の解明とその治癒戦略策定」「ウイルス感染伝播の時空間的解析法の開発」、文部科学省「イノベーションシステム整備事業先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム」、日本学術振興会、横浜医学振興財団の支援を受けて行われました。

お问い合わせ先

(取材対応窓口、资料请求など)
研究企画?产学连携推進課長渡邊誠
Tel:045-787-2510
E-mail:kenkyupr@yokohama-cu.ac.jp