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アスピリンによる小腸粘膜傷害に対する プロバイオティクスの治療効果を発見

2020.06.12
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アスピリンによる小腸粘膜傷害に対する プロバイオティクスの治療効果を発見

横浜市立大学医学部 肝胆膵消化器病学教室の 中島 淳 主任教授、吉原 努 助教らの研究グループは、ビオフェルミン製薬株式会社の及川 洋祐 研究員らと共同で、アスピリンによる小腸粘膜傷害はプロトンポンプ阻害薬*1(笔笔滨)で増悪し、その原因が空肠でのAkkermansia muciniphila(A. muciniphila)の増殖にあることを动物モデルで见出しました。この小肠粘膜伤害は、ビフィズス菌の1つである、Bifidobacterium bifidum G9-1 で改善したことから、プロバイオティクス*2が治疗の选択肢となり得ることを示しています(図)。

本研究成果は、『Gut Microbes』に掲載されました。

 研究成果のポイント

?&苍产蝉辫;アスピリンによる小肠粘膜伤害の动物モデルを用いて、笔笔滨が増悪因子となっていること、その际に空肠でA. muciniphila が异常増殖していることを确认した。
Bifidobacterium bifidum G9-1 は上記の腸内細菌叢の乱れを改善し、小腸粘膜傷害を予防する可能性が示された。
 
 図. アスピリンによる小腸粘膜傷害では、PPIが増悪因子となり、Bifidobacterium bifidum G9-1 で改善した。

研究の背景

アスピリンを含む非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、胃十二指腸潰瘍の原因としてよく知られています。近年小腸カプセル内視鏡検査の普及が進み、これまで観察が難しく暗黒の臓器といわれていた小腸を観察できるようになり、NSAIDは小腸粘膜にも傷害を生じることがわかってきました。マウスなどの動物モデルでは、アスピリン以外のNSAID による小腸粘膜傷害が知られていましたが、アスピリンでは小腸粘膜傷害を発生させられず、病態解明の妨げになっていました。そこで、マウスに高果糖食を継続して摂取させたところ、60%の個体で小腸粘膜傷害の形成に成功しました。

一方、胃十二指肠溃疡予防としてアスピリンによく併用される笔笔滨が小肠粘膜伤害を増悪させる报告のあることから、アスピリン小肠粘膜伤害モデルを用いて、笔笔滨を併用した际に小肠で起こっている现象と病态およびその治疗法を解明することにしました。

研究の内容

アスピリン小腸粘膜傷害モデルにPPIを投与すると、特に空腸で小腸粘膜傷害の増悪が認められました。PPIは胃酸分泌を抑制して小腸管腔のpH を上昇させ、これにともない腸内細菌の構成に乱れの生じることが報告されているため、次世代シークエンサーで空腸の細菌叢を解析しました。すると、小腸には普段みられないA. muciniphila がよく検出され、笔笔滨投与によって空肠の中でもA. muciniphila が生息しやすい状态になったのではないかと考えられました。

A. muciniphilaは肠の粘膜を覆って保护しているムチンを分解する细菌として知られており、これが粘膜伤害を増悪させる原因となっている细菌ではないかと疑われました。実际に、笔笔滨により小肠粘膜伤害が増悪した群(笔笔滨+アスピリン)では、ムチン层は薄くなっていました。そこで高果糖食を摂取させたマウスにA. muciniphila を投与したところ、投与无しのコントロール群と比较して空肠のムチン层が明らかに薄くなっていました。アスピリンと笔笔滨を投与したときも、ムチン层が薄くなっていたことから、笔笔滨投与によるA. muciniphila の増殖が関与していると考えられました。これに対し肠内细菌丛の乱れを改善すると报告のあるBifidobacterium bifidum G9-1 を投与すると、A. muciniphila の増殖は抑制されて、ムチン层はコントロール群と同様に厚くなりました。

また、Bifidobacterium bifidum 骋9-1は制御性罢细胞を増加させることも発见しました。制御性罢细胞は、过剰な炎症を抑制する働きのあるリンパ球であり、この抗炎症作用が粘膜伤害増悪を抑制したことを示唆しています。


今后の展开

平成30年の厚生労働省の人口动态调査における日本人の死因は、心疾患が2位、脳血管疾患が4位となっています。心筋梗塞や脳梗塞の予防にはアスピリンが広く用いられ、その投薬による胃十二指肠溃疡の予防を目的として笔笔滨がよく処方されています。しかしその効果がみられる一方で、胃や十二指肠、大肠の内视镜検査では原因がわからない、小肠出血が原因と考えられる消化管出血が时折みられていました。この出血のためにアスピリンなど抗血小板剤を休薬すると、その期间は血栓症の発生リスクが上がってしまうため、小肠粘膜伤害の予防は喫紧の课题でした。

今回の研究で、普通食を摂取したマウスでは粘膜伤害が起こらなかったことから、高果糖食の多い西洋食など食生活の変化が小肠粘膜伤害のリスクである可能性が考えられます。食生活の変化は、肠内细菌丛の乱れを惹起しやすいためです。また、动物モデルでプロバイオティクスが粘膜伤害改善の键であることが明らかになりましたが、ヒトにおいても同様であるかどうかは今后の検讨课题です。


用语説明

*1 プロトンポンプ阻害薬(PPI):胃酸を分泌する细胞に作用し、胃酸の分泌を强力に减らす薬のことです。胃溃疡や十二指肠溃疡、逆流性食道炎の治疗や予防によく使われます。

*2 プロバイオティクス:肠内细菌のバランスを改善することによって、宿主の健康に好影响を与える生きた微生物と定义され、それを含む製品を含みます。摂取により、肠の机能を改善するだけでなく、全身に有益な効果をもたらすことが期待されています。


掲载论文

The protective effect of Bifidobacterium bifidum G9-1 against mucus degradation by Akkermansia muciniphila following small intestine injury caused by a proton pump inhibitor and aspirin
Tsutomu Yoshihara, Yosuke Oikawa, Takayuki Kato, Takaomi Kessoku, Takashi Kobayashi, Shingo Kato,
Noboru Misawa, Keiichi Ashikari, Akiko Fuyuki, Hidenori Ohkubo, Takuma Higurashi, Yoko Tateishi,
Yoshiki Tanaka, Shunji Nakajima, Hiroshi Ohno, Koichiro Wada & Atsushi Nakajima
Gut Microbes, 09 Jun 2020 


※本研究は、ビオフェルミン製薬株式会社との共同研究により実施されました。



お问合わせ先

(研究内容に関するお问い合わせ)

医学部  肝胆膵消化器病学教室
助教  吉原 努 
E-mail: t_yoshi @yokohama-cu.ac.jp
TEL:045-787-2640

(取材対応窓口、资料请求など)
研究?产学连携推進課長  山﨑 理絵  
E-Mail:kenkyupr@yokohama-cu.ac.jp
TEL:045-787-2510

词ビオフェルミン製薬について词
大正6年创业以来「乳酸菌のくすりで、おなかの健康を守り、すべての人が健やかに暮らせる社会に贡献する」を理念としております。数千种の细菌からなる肠内フローラに早くから着目し、そこで果たす乳酸菌の効果を追求することで、おなかの健康を支えてまいりました。幅広い领域で未知の可能性を探求し、乳酸菌の新たな価値を创造し、提供してまいります。

会社概要
会社名: ビオフェルミン製薬株式会社
設立: 1917年(大正6年)2月12日
本社住所: 〒650-0021 神戸市中央区三宮町一丁目1番2号三宮セントラルビル12階
会社贬笔:
ビオフェルミン製薬问い合わせ窓口(担当:小滨)