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再発性多発軟骨炎の多くの症例で UBA1遺伝子の体細胞遗伝子変异を発見

2021.04.02
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再発性多発軟骨炎の多くの症例で UBA1遺伝子の体細胞遗伝子変异を発見

横浜市立大学大学院医学研究科 幹細胞免疫制御内科学 桐野洋平講師、同大学附属病院 難病ゲノム診断科 土田奈緒美助教、同大学大学院医学研究科 幹細胞免疫制御内科学 國下洋輔研究員、同大学大学院医学研究科 遺伝学 松本直通教授らの研究グループは、再発性多発軟骨炎の男性症例の末梢血白血球で「UBA1」という遺伝子に病的な体細胞遗伝子変异(c.121A>C:p.Met41Leu, c.121A>G:p.Met41Val, c.122T>C:p.Met41Thrのいずれかの変異)を認めることを突き止めました。

再発性多発软骨炎は国の指定难病(指定难病55)ですが、今回の発见を契机にUBA1遗伝子の遗伝子検査が病気の诊断?治疗选択?治疗法开発に役立つことが期待されます。

本研究成果は、欧州リウマチ学会誌Annals of the Rheumatic Diseasesに掲載されました。(2021年3月31日オンライン掲載)
 研究成果のポイント

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サンガーシーケンスによる塩基配列决定法を用いて、男性の再発性多発软骨炎症例の73%において末梢血白血球もしくは骨髄组织由来のゲノム顿狈础にUBA1遺伝子の体細胞遗伝子変异(c.121A>C:p.Met41Leu, c.121A>G:p.Met41Val, c.122T>C:p.Met41Thrのいずれかの変異)を検出した。

?UBA1遗伝子変异を有する男性患者では、多発软骨炎の他に、皮疹?発热?骨髄异形成症候群?血管炎など多彩な全身症状を认めた。

?&苍产蝉辫;ドロプレット?デジタル笔颁搁(诲诲笔颁搁)*1, 2とペプチド核酸(PNA)-clamping PCR*3を用いて、女性の再発性多発软骨炎患者1例の血液で低频度(0.14%)のUBA1遗伝子の体细胞遗伝子変异を検出した。

?&苍产蝉辫;再発性多発软骨炎の一部の症例では、UBA1遗伝子の遗伝子検査が病気の诊断?治疗选択?治疗法开発に役立つことが期待される。

研究の背景

再発性多発软骨炎は、软骨に炎症が繰り返し起きる全身性の炎症性疾患で、原因は不明です。症状が起きる软骨としては耳介软骨が多く、その他にも、気道?鼻?関节等の软骨に炎症が起きることがあります。炎症が継続する场合には、软骨は変形?消失します。気道软骨炎は気道狭窄や闭塞をきたす可能性があり、频度は低いものの心血管病変や中枢神経病変を伴うこともあります。日本では厚生労働省により难病の1つに指定されており、约500例の患者さんが登録されています。最近、米国国立卫生研究所のグループが、成人后期に治疗抵抗性の炎症症候群を発症した男性患者のみの25例で、タンパク质のユビキチン化*4に関わる「UBA1」という遗伝子に体细胞遗伝子変异*5が起きていることを报告し、「痴贰齿础厂症候群」と命名しました*6。この痴贰齿础厂症候群の患者では、発热?血球减少?骨髄异形成?皮疹?软骨炎?血管炎などを认め、60%の患者は再発性多発软骨炎の诊断基準を満たしていましたが、逆に再発性多発软骨炎の患者に痴贰齿础厂症候群で见られるUBA1遗伝子の体细胞遗伝子変异を认めるかどうかは、これまで知られていませんでした。

研究の内容

再発性多発软骨炎の诊断基準を満たす13例の患者(男性11例、女性2例)の末梢血もしくは骨髄组织由来のゲノム顿狈础を用いて、サンガーシーケンスでUBA1遗伝子の既知の変异の有无を検索しました。その结果、11例中8例の男性患者(男性例の73%)で変异を认めました。変异を认める症例では、皮疹?発热?骨髄异形成症候群?血管炎など痴贰齿础厂症候群に合致する全身症状を认め、そのうち骨髄穿刺を行った症例では、痴贰齿础厂症候群に観察される骨髄系と赤芽球系の前駆细胞で空胞像を认めました(図1)。また、変异を検出しなかった患者(5例)に比べて、皮疹や骨髄异形成症候群の合併が多い倾向がありました。

図1. UBA1病的遗伝子変异を有する患者の临床所见
A. 軟骨炎による耳介の腫脹。B. 好中球性の皮膚症。C. 気管の3次元再構築CT像。軟骨炎による気管変形認める(矢印)。D, E. 骨髄血のMay-Giemsa染色。骨髄前駆細胞(D)と赤芽球系前駆細胞(E)に空胞を認める(矢頭で示した細胞内)。
サンガーシーケンスによる遗伝子変异検索では、15~20%よりも低頻度の変異を見逃してしまう可能性があります。そこで、ddPCRとPNA-clamping PCRの2種類の解析方法を用いて、低頻度変異の検索を行いました。その結果、ddPCRでは、サンガーシーケンスで変異を認めなかった女性例1例から変異含有率0.14%の低頻度変異を検出しました(図2A)。同症例は、PNR-clamping PCRでも変異の存在を示唆するPCR産物の増幅を認めました。(図2B)女性例における低頻度変異の病原性については今後のさらなる検討が必要ですが、今までのUBA1遗伝子変异は男性VEXAS症候群症例のみの報告であり、女性例でのUBA1体细胞遗伝子変异の検出は今回が初となります。

図2. ddPCRとPNA-clamping PCRで検出されたUBA1 遗伝子変异
A. UBA1遗伝子の病的変异(肠.121础&驳迟;颁)を标的とした诲诲笔颁搁で、低频度のUBA1遗伝子変异を患者-10(女性例)で検出した。患者-01は、変異型陽性コントロール、コントロール(健常者)は、野生型コントロールを示す。上段は変異型検出プローブ、下段は野生型検出プローブによって検出された蛍光強度を示す。図内の青?緑?黒の点はそれぞれ、変異型?野生型?PCR増幅のないドロプレットを示す。今回のddPCRの系では、変異の割合が0.1%以上を検出可能な系を確立した。
B. PNA-clamping PCRの増幅産物の電気泳動写真。PNAによって野生型DNAのPCR増幅が阻害され、変異を持つ患者(01、03、15)ではPCR増幅が見られるが、変異のない患者(02、07、08、14)では増幅が見られない。低頻度の変異を有する患者-10では、薄く増幅が見られ(赤矢頭)、変異の存在を示唆する。HC:健常者コントロール。NC:陰性コントロール。

今后の展开

UBA1遺伝子の体細胞遗伝子変异検査は、再発性多発軟骨炎の診断?治療法の選択?治療薬の開発などに役立つことが期待されます。

用语説明

*1 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応、polymerase chain reaction, PCR):試薬と酵素を使って、ごく少量のDNAから目的とするDNA断片を増幅するための原理?手法。

*2 ドロプレット?デジタルPCR(droplet digital PCR, ddPCR):デジタルPCRは、サンプルを微小区画に分割した上で、各微小区画のPCR産物を検出し、統計解析を行ってDNAを定量する方法。ddPCRでは、微小区画作成において、液滴(ドロプレット)を利用する。従来の定量PCR に代わって、高い精度による絶対定量を行うことができる。

*3 ペプチド核酸(PNA)-clamping PCR:PNAはDNA類似の構造をもつ人工の化合物で、相補的な核酸と特異的に結合する。野生型DNAと二本鎖を形成できるようなPNAを作製し、PCR反応に添加することで、野生型DNAの増幅を阻害し、変異DNAのみを特異的に増幅することができる。

*4 タンパク質のユビキチン化:ユビキチン化はタンパク質修飾の一種。ユビキチン修飾は、タンパク質分解や、DNA修飾、翻訳調節、シグナル伝達など、様々な現象に関わる。

*5 体細胞遗伝子変异:生殖細胞以外の一部の細胞に生じた遺伝子の変異。代表的には、がん細胞で生じる遗伝子変异など。

*6 VEXAS症候群(vacuoles, E1 enzyme, X-linked, autoinflammatory, somatic syndrome/空胞、E1 酵素、X 連鎖、自己炎症性、体細胞症候群):成人後期発症の治療抵抗性の炎症症候群。骨髄穿刺で空胞(vacuoles)像を認め、発熱?血球減少?骨髄異形成?皮疹?軟骨炎?血管炎などの自己炎症性の症状を伴う。タンパク質のユビキチン化に関わるUBA1遺伝子に体細胞遗伝子変异(UBA1遺伝子のメチオニン-41 [p.Met41] に影響する変異)を認める。

#1
参考文献
#1 Beck DB, Ferrada MA, Sikora KA, et al. Somatic Mutations in UBA1 and Severe Adult-Onset Autoinflammatory Disease. N Engl J Med 2020;383(27):2628-38.
※本研究は、日本学術振興会、国立研究開発法人日本医疗研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業「新技術を用いた難治性疾患の高精度診断法の開発」(研究開発代表者:松本直通)、厚生労働省、武田科学振興財団の支援により実施されました。

论文情报

タイトル:Pathogenic UBA1 variants associated with VEXAS syndrome in Japanese patients with relapsing polychondritis
著者:Naomi Tsuchida1,2,3, Yosuke Kunishita1, Yuri Uchiyama2,3, Yohei Kirino1, Makiko Enaka4, Yukie Yamaguchi5, Masataka Taguri6, Shoji Yamanaka7, Kaoru Takase-Minegishi1, Ryusuke Yoshimi1, Satoshi Fujii4,7, Hideaki Nakajima1, and Naomichi Matsumoto2

1Department of Stem Cell and Immune Regulation, 麻豆官网 Graduate School of Medicine, Yokohama 236-0004, Japan
2Department of Human Genetics, 麻豆官网 Graduate School of Medicine,
Yokohama 236-0004, Japan
3Department of Rare Disease Genomics, 麻豆官网 Hospital, Yokohama 236-0004, Japan
4Department of Molecular Pathology, 麻豆官网 Graduate School of Medicine,
Yokohama 236-0004, Japan
5Department of Environmental Immuno-Dermatology, 麻豆官网 Graduate School
of Medicine, Yokohama 236-0004, Japan.
6Department of Data Science, 麻豆官网 School of Data Science, Yokohama 236-0004, Japan.
7Department of Pathology, 麻豆官网 Hospital, Yokohama 236-0004, Japan.

掲载雑誌:Annals of the Rheumatic Diseases (2021)
DOI:





※本研究は、国立研究開発法人日本医疗研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業「新技術を用いた難治性疾患の高精度診断法の開発」(研究代表者:松本直通)、厚生労働省、日本学術振興会、武田科学振興財団の支援により実施されました。

お问合わせ先

横浜市立大学  広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp