2018.09.26
- プレスリリース
- 研究
ゲノム倍数化が进化の可能性を高める
复雑なゲノムをもつ主要作物の分子育种へ向けた新规技术
~『Nature Communications』に掲載~
横浜市立大学 木原生物学研究所の清水健太郎客員教授のグループは、産業技術総合研究所、筑波大学、金沢大学、チューリッヒ大学などとの共同研究で、複数の異なる染色体セット(ゲノム)を持つ異質倍数体種*1のゲノム変異を同定する新規解析技術の開発に成功しました。この技術を利用した解析により、ゲノム倍数化が進化の可能性を広げるという、故 大野乾博士らによる50年来の理論的な予測を支持する結果を得ました。
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研究成果のポイント
〇ゲノムが倍加して遗伝子数が増加することで、进化の可能性が高まる 〇倍数体の有用植物から育种の材料となる有利な変异をゲノムワイドに発见する技术を开発 |
セイヨウアブラナやコムギなどの主要な作物は、似て非なる复数の种由来のゲノムが组み合わさって、遗伝子数が二倍以上に増えた倍数体种ですが、増加した遗伝子同士の配列が非常に类似しているため、それらを区别して个体间の変异を解析することが困难でした。
今回の技术开発では、モデル倍数体植物である四倍体のミヤマハタザオ(学名:Arabidopsis kamchatica)を用い、どちらの亲由来の配列であるのかを特定し、个体间のゲノム変异を検出できるプログラムの开発に成功しました。
この技术を用いてミヤマハタザオの25集団のゲノムを解析し、生育に有利になるアミノ酸置换进化の割合を推定したところ、これまで报告されているほとんどの二倍体植物种を凌ぐことが分かりました。この技术を作物に応用することで、育种のターゲットとなる有利な変异をゲノム情报から発见することが可能となり、より迅速で効率的な分子育种につながると期待されます。
本研究成果は、国際学術雑誌『Nature Communications』(日本時間 平成30年9月26日18:00付)にオンライン掲載されました。
今回の技术开発では、モデル倍数体植物である四倍体のミヤマハタザオ(学名:Arabidopsis kamchatica)を用い、どちらの亲由来の配列であるのかを特定し、个体间のゲノム変异を検出できるプログラムの开発に成功しました。
この技术を用いてミヤマハタザオの25集団のゲノムを解析し、生育に有利になるアミノ酸置换进化の割合を推定したところ、これまで报告されているほとんどの二倍体植物种を凌ぐことが分かりました。この技术を作物に応用することで、育种のターゲットとなる有利な変异をゲノム情报から発见することが可能となり、より迅速で効率的な分子育种につながると期待されます。
本研究成果は、国際学術雑誌『Nature Communications』(日本時間 平成30年9月26日18:00付)にオンライン掲載されました。
研究の背景
ヒトや多くの生物种は通常の细胞中に2セットの染色体を持ちますが、セット数が増えた个体が现れ、新种として确立することがあります。これをゲノム重复と呼び、动物、菌类、植物など多くの系统で普遍的に起きる现象です。
特にコムギやセイヨウアブラナなど有用植物には、植物の進化の歴史の中でも比較的最近ゲノム重複を経た倍数体種が多いことが知られています。このことから、ゲノム重複には生存?繁殖にとって何らかの進化上の利点があると長く考えられてきました。アメリカで活躍した故大野乾 (すすむ) 博士は、50年も前から、ゲノム重複が生物の新規性をもたらしたという仮説を提唱してきました。遺伝子コピーが重複すると冗長性が生じて進化の制約が緩み、タンパク質を変える遺伝子変異などが蓄積し、新しい機能が進化しやすくなるという説です。
しかし逆に、ゲノム倍数化による种分化が起こる际には、个体数が减少してゲノム変异が减少するという説もありました。横浜市立大学木原生物学研究所では、コムギの倍数化起源を解明した故木原均教授以来の倍数体生物研究の伝统を生かし、闯厂罢戦略的创造研究推进事业(颁搁贰厂罢)などの支援を受けて倍数体穀物の研究に取り组んできました。
近年の有用植物やヒトのゲノム解析では、1個体だけでなく多数個体のゲノム変異の解析が主流となっています。複数の個体を比較することで、ゲノム配列の個体差(または個人差)を網羅的に発見し、その中から病原抵抗性など重要な形質に関わる遺伝子変異の単離につながるためです。特に、変異の頻度と種間差の情報からは、進化の過程で有利なために広まったアミノ酸変異や、逆に不利なために負の自然選択を受けたアミノ酸変異の割合を推定することができます。しかし倍数体種では互いに類似した複数のゲノムセットを区別して解析する困難さのため、多数個体のゲノムを比較?解析する技術は整っておらず、その確立が課題となっていました。代表的な倍数体の有用植物であるコムギはゲノムサイズが17 Gb(170億塩基対)と巨大なため解読に時間がかかり、迅速な技術開発には不向きだったのも一因です。
そこで本研究では、ゲノムサイズがコムギの35分の1以下の约450惭产(4亿5千万塩基対)と小さいミヤマハタザオに着目し、モデル倍数体として开発に利用しました。この植物は、世界中で植物学者による研究が进んでいるモデル生物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に近縁であるため、これまでに整備されてきたシロイヌナズナの遺伝子情報や解析技術を応用できるという利点もあります。また環太平洋北部に広がる分布域のうちでも日本で最も遺伝的多様性が高く、標高0 mから3,000 mまでと非常に多様な気候に適応した生態学的にも重要な種です。日本発のモデル倍数体種として本グループで研究を進めています。
特にコムギやセイヨウアブラナなど有用植物には、植物の進化の歴史の中でも比較的最近ゲノム重複を経た倍数体種が多いことが知られています。このことから、ゲノム重複には生存?繁殖にとって何らかの進化上の利点があると長く考えられてきました。アメリカで活躍した故大野乾 (すすむ) 博士は、50年も前から、ゲノム重複が生物の新規性をもたらしたという仮説を提唱してきました。遺伝子コピーが重複すると冗長性が生じて進化の制約が緩み、タンパク質を変える遺伝子変異などが蓄積し、新しい機能が進化しやすくなるという説です。
しかし逆に、ゲノム倍数化による种分化が起こる际には、个体数が减少してゲノム変异が减少するという説もありました。横浜市立大学木原生物学研究所では、コムギの倍数化起源を解明した故木原均教授以来の倍数体生物研究の伝统を生かし、闯厂罢戦略的创造研究推进事业(颁搁贰厂罢)などの支援を受けて倍数体穀物の研究に取り组んできました。
近年の有用植物やヒトのゲノム解析では、1個体だけでなく多数個体のゲノム変異の解析が主流となっています。複数の個体を比較することで、ゲノム配列の個体差(または個人差)を網羅的に発見し、その中から病原抵抗性など重要な形質に関わる遺伝子変異の単離につながるためです。特に、変異の頻度と種間差の情報からは、進化の過程で有利なために広まったアミノ酸変異や、逆に不利なために負の自然選択を受けたアミノ酸変異の割合を推定することができます。しかし倍数体種では互いに類似した複数のゲノムセットを区別して解析する困難さのため、多数個体のゲノムを比較?解析する技術は整っておらず、その確立が課題となっていました。代表的な倍数体の有用植物であるコムギはゲノムサイズが17 Gb(170億塩基対)と巨大なため解読に時間がかかり、迅速な技術開発には不向きだったのも一因です。
そこで本研究では、ゲノムサイズがコムギの35分の1以下の约450惭产(4亿5千万塩基対)と小さいミヤマハタザオに着目し、モデル倍数体として开発に利用しました。この植物は、世界中で植物学者による研究が进んでいるモデル生物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に近縁であるため、これまでに整備されてきたシロイヌナズナの遺伝子情報や解析技術を応用できるという利点もあります。また環太平洋北部に広がる分布域のうちでも日本で最も遺伝的多様性が高く、標高0 mから3,000 mまでと非常に多様な気候に適応した生態学的にも重要な種です。日本発のモデル倍数体種として本グループで研究を進めています。
【図1】日本発の倍数体モデル植物ミヤマハタザオ。鸟取県大山の个体(左)と、低地型の亜种タチスズシロソウ(右、滋贺県琵琶湖岸)
【図2】 モデル倍数体種ミヤマハタザオは、ハクサンハタザオのゲノムDNA(青色)とセイヨウミヤマハタザオのゲノムDNA(赤色)を併せ持つ四倍体の種である。本研究では、このように複雑な構成を持つ倍数体のゲノムの解析技術を開発した。
研究の内容と成果
今回の研究では、モデル倍数体植物である四倍体のミヤマハタザオ(A. kamchatica)を用い、倍数体が持つゲノムの复雑性を克服するための技术开発を试みました。
まず、ミヤマハタザオの亲种にあたる二倍体のハクサンハタザオ(A. halleri)とセイヨウミヤマハタザオ(A. lyrata)のゲノム配列を再构筑しました。その上で、この両亲のゲノム配列を参照することで、四倍体のミヤマハタザオが持つ2セットのゲノム配列について、どちらの亲由来の配列であるのかを特定し、个体间のゲノム変异を検出できるプログラムの开発に成功しました。
この技术を用い、日本を中心とした环太平洋北部の分布域全体から选抜した25集団のミヤマハタザオ(図3)のゲノムを解読することで、ミヤマハタザオ种内の変异の频度と、シロイヌナズナなど近縁他种との种间差を定量的に解析することが可能となりました。
また、ミヤマハタザオのゲノム全域にわたって、タンパク质のアミノ酸を変化させる変异(非同义置换*2)の量を、変化させない変异(同义置换)の量と比较した结果、ミヤマハタザオでは生育に有利な可能性が高い非同义置换が、これまで报告されているほとんどの二倍体植物种よりも高频度で検出されました。
さらに、ミヤマハタザオとその亲の二倍体ハクサンハタザオの共通した特徴であるカドミウムや亜铅など重金属の蓄积と耐性にかかわるHMA4遗伝子座の解析では、倍数化によるゲノム重复によって2つに増えたHMA4遗伝子のそれぞれが大きく异なった自然选択の歴史をたどったことがわかりました。それぞれの亲から受け継いだ2つの遗伝子(ホメオログ*3)が别々の自然选択を受けるということは、进化?育种の素材となる遗伝子数が倍数化によって増加するということを意味します。これらの结果は、倍数化が进化の可能性を広げるという、故大野乾博士らの理论的予测を支持するものとなりました。
まず、ミヤマハタザオの亲种にあたる二倍体のハクサンハタザオ(A. halleri)とセイヨウミヤマハタザオ(A. lyrata)のゲノム配列を再构筑しました。その上で、この両亲のゲノム配列を参照することで、四倍体のミヤマハタザオが持つ2セットのゲノム配列について、どちらの亲由来の配列であるのかを特定し、个体间のゲノム変异を検出できるプログラムの开発に成功しました。
この技术を用い、日本を中心とした环太平洋北部の分布域全体から选抜した25集団のミヤマハタザオ(図3)のゲノムを解読することで、ミヤマハタザオ种内の変异の频度と、シロイヌナズナなど近縁他种との种间差を定量的に解析することが可能となりました。
また、ミヤマハタザオのゲノム全域にわたって、タンパク质のアミノ酸を変化させる変异(非同义置换*2)の量を、変化させない変异(同义置换)の量と比较した结果、ミヤマハタザオでは生育に有利な可能性が高い非同义置换が、これまで报告されているほとんどの二倍体植物种よりも高频度で検出されました。
さらに、ミヤマハタザオとその亲の二倍体ハクサンハタザオの共通した特徴であるカドミウムや亜铅など重金属の蓄积と耐性にかかわるHMA4遗伝子座の解析では、倍数化によるゲノム重复によって2つに増えたHMA4遗伝子のそれぞれが大きく异なった自然选択の歴史をたどったことがわかりました。それぞれの亲から受け継いだ2つの遗伝子(ホメオログ*3)が别々の自然选択を受けるということは、进化?育种の素材となる遗伝子数が倍数化によって増加するということを意味します。これらの结果は、倍数化が进化の可能性を広げるという、故大野乾博士らの理论的予测を支持するものとなりました。
【図3】 日本を中心とした環太平洋北部にわたるミヤマハタザオの分布域全体から収集した25個体のゲノム解析を行った(Paape et al. の図より)。
今后の展开
今回の技术开発は2つの亲から生まれた四倍体のミヤマハタザオを利用して行いました。现在、3つの亲を持つ六倍体であるコムギに応用できるよう、コムギゲノム情报の整备を进めています。进化上有利な変异を解析することは、育种のターゲットとして有望な遗伝子を特定することにもつながります。この技术はあらゆる倍数体に応用可能なため、コムギに限らずさまざまな倍数体作物での迅速な育种を可能にすることが期待されます。
用语解説
*1 倍数体:ゲノム重复によって二组以上の染色体を持つ个体。ミヤマハタザオはハクサンハタザオとセイヨウミヤマハタザオという2种の二倍体両亲から生まれた异质四倍体である。コムギは、3种の二倍体が融合した六倍体种である。
*2 非同义置换:顿狈础配列の塩基が置き换わる変异のうち、その遗伝子がコードするアミノ酸配列が変化し、タンパク质の机能変换を引き起こす可能性のある変异をいう。同义置换は、アミノ酸配列が変化せずタンパク质の机能も変わらない変异をいう。一般的に非同义置换の方が强く自然选択の影响を受けやすい。
*3 ホメオログ:異質倍数体が持つ異なる親種に由来する重複した遺伝子。
*2 非同义置换:顿狈础配列の塩基が置き换わる変异のうち、その遗伝子がコードするアミノ酸配列が変化し、タンパク质の机能変换を引き起こす可能性のある変异をいう。同义置换は、アミノ酸配列が変化せずタンパク质の机能も変わらない変异をいう。一般的に非同义置换の方が强く自然选択の影响を受けやすい。
*3 ホメオログ:異質倍数体が持つ異なる親種に由来する重複した遺伝子。
※本研究は、科学技術振興機構(JST)CREST「環境変動に対する植物の頑健性の解明と応用に向けた基盤技術の創出」、文部科学省科研費 新学術領域研究「植物新種誕生の原理」などの支援を受けて遂行しました 。
论文着者ならびにタイトル
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Timothy Paape, Roman V. Briskine, Gwyneth Halstead-Nussloch, Heidi E. L. Lischer, Rie Shimizu-Inatsugi, Masaomi Hatakeyama, Kenta Tanaka, Tomoaki Nishiyama, Renat Sabirov, Jun Sese, Kentaro K. Shimizu.
Nature Communications. DOI: 10.1038/s41467-018-06108-1
(本資料の内容に関するお问い合わせ)
公立大学法人横浜市立大学 木原生物学研究所 客員教授 清水健太郎
(スイス?チューリッヒ大学 進化生物?環境学研究所 兼任)
TEL:+41 44 63 56740(チューリッヒ大学)
罢贰尝:045-820-2429(木原生物学研究所)
贰-尘补颈濒:kentaro.shimizu@ieu.uzh.ch
(取材対応窓口、资料请求など)
研究企画?産学連携推進課長 渡邊 誠
罢贰尝:045-787-2510
贰-惭补颈濒:kenkyupr@yokohama-cu.ac.jp
公立大学法人横浜市立大学 木原生物学研究所 客員教授 清水健太郎
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(取材対応窓口、资料请求など)
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