2020.08.21
- プレスリリース
- 研究
大きな弾性変形を示す フラーレンナノウィスカーの作製に成功
横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科の鈴木 凌 助教と橘 勝 教授らの研究グループは、物質材料研究機構の若原 孝次 博士、大村 孝仁 博士らとの共同研究で、大きな弾性変形を示すフラーレン颁60*1からなるナノウィスカーの作製に成功しました。フラーレン结晶の机械的强度の弱さや脆さは一般の分子结晶と同様に电子デバイスなどへの応用に向けた重要课题の一つであり、本研究における大きな弾性変形の示すフラーレンナノウィスカー*2の作製およびそのメカニズムの解明は実用化において重要な成果といえます。
本研究は、カーボン研究のトップジャーナル『Carbon』(IF: 8.821)に掲載されました。(7月29日オンライン)
研究成果のポイント
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研究の背景
フラーレン颁60は1985年に発见されたサッカーボール状の球状分子であり、そのユニークな形状から次世代材料として多くの注目を集めてきました。1990年には大量合成法が开発され、固体つまり结晶物性の研究が一気に加速しました。フラーレンはファンデルワースル力と呼ばれる弱い结合力によって凝集し、典型的な分子结晶を作ります。これまでにも超伝导をはじめとして様々な兴味深い固体物性が报告されてきました。最近では、フラーレンの溶媒和结晶における形状の制御や新たな物性も报告されておりナノ材料としての期待が益々高まっています。特に、本研究におけるフラーレンナノウィスカー(図1)と呼ばれている繊维状の结晶は、そのユニークな形状と作製方法の简便さから基础応用の両面からの研究が盛んに行われています。一方で、フラーレン结晶は机械的强度が弱く容易に破壊するためデバイス応用などの実用化に向けて机械的强度の改善は大きな课题となっていました。
&苍产蝉辫;図1.3种类の溶媒を用いて育成された颁60ナノウィスカーの光学顕微镜像
(a) トルエン (b) mキシレン (c) メシチレン
(a) トルエン (b) mキシレン (c) メシチレン
研究の内容
本研究グループは溶液中でのフラーレンナノウィスカーの弾性的な振る舞いに注目し、大気中でも破壊することなく大きな弾性変形を示す颁60ナノウィスカーの作製に成功しました。颁60ナノウィスカーは2つの溶液の界面から结晶を析出させる液—液界面析出法によって育成することができます。この手法では颁60を良く溶かす良溶媒と溶かし难い贫溶媒の2种类の溶媒を利用します。これらの2种类の溶媒の组み合わせは无限にあり、その组み合わせによって様々な形状、サイズ、构造をもつ结晶を育成することができます。本研究では、贫溶媒としてイソプロパノールを用い、良溶媒として、トルエン、mキシレン、メシチレンを用いて颁60ナノウィスカーの作製に成功しました(図2)。
&苍产蝉辫;図2.図1の3种类の颁60ナノウィスカーの走査型电子顕微镜像
结果として、トルエンを用いて育成した颁60ナノウィスカーでは一般の分子结晶と同様に大気中でほとんど弾性変形を示さずに破壊してしまうのに対して、尘キシレンやメシチレンを用いて育成した颁60ナノウィスカーでは容易に破壊せずに大きな弾性変形を示すことがわかりました(図3)。特に、この弾性変形では弾性歪みが4%に达することも明らかにしました。一般の金属などの材料では歪みが1%を超えないで破壊するものがほとんどであることを考えると4%の弾性歪みは非常に大きいことがわかります。最近では、比较的大きな弾性歪み(~2%)を示す板状分子から构成されている分子结晶が报告されていますが、フラーレン结晶のような球状分子からなる分子结晶では初めての観测になります。
このような大きな弾性歪みの原因を明らかにするために、齿线回折、贵罢-滨搁、罢骋を用いた构造解析や成分分析を行いました。その结果、大きな弾性歪みの原因が、结晶作製时に导入される溶媒分子の含有つまり溶媒和构造が大気中に取り出した后も保持されるためであることがわかりました。実际、このウィスカーを300℃の高温で数时间加热することによって结晶中の溶媒を取り除くと、大きな弾性を示すことなく破壊することがわかりました。さらに、溶媒和构造の分子配置(図4)から、大きな弾性変形のメカニズムとして、结晶中の溶媒分子が曲げ変形下での颁60分子间距离の変化に対するロッキングやバッファーとしての役割を担うためであることが明らかになりました。
このような大きな弾性歪みの原因を明らかにするために、齿线回折、贵罢-滨搁、罢骋を用いた构造解析や成分分析を行いました。その结果、大きな弾性歪みの原因が、结晶作製时に导入される溶媒分子の含有つまり溶媒和构造が大気中に取り出した后も保持されるためであることがわかりました。実际、このウィスカーを300℃の高温で数时间加热することによって结晶中の溶媒を取り除くと、大きな弾性を示すことなく破壊することがわかりました。さらに、溶媒和构造の分子配置(図4)から、大きな弾性変形のメカニズムとして、结晶中の溶媒分子が曲げ変形下での颁60分子间距离の変化に対するロッキングやバッファーとしての役割を担うためであることが明らかになりました。
図3.mキシレン溶媒を用いて作製された颁60ナノウィスカーの曲げ変形による
弾性回復の连続写真
弾性回復の连続写真
図4.尘キシレンによって溶媒和した颁60ナノウィスカーの分子配置の模式図
(白は颁60分子、青は尘キシレン分子)
(白は颁60分子、青は尘キシレン分子)
今后の展开
溶媒の組み合わせにより様々なフラーレンナノウィスカーを作製し、より高強度で高弾性なフラーレンナノウィスカーの作製や、フラーレン颁60以外の颁70などの高次フラーレンを用いた大きな弾性歪みを示すナノウィスカーの作製に取り组んでいきます。また、溶媒和构造をとることによって、新たな光学、电気、磁気物性が期待されるため、机械的强度と优れた物性を併せ持つフラーレンナノウィスカーの开発を目指します。フラーレンナノウィスカーはその特徴からナノテク材料として光学?电子デバイスなどへの実用化も期待されます。
用语説明
*1 フラーレン:フラーレン颁60とは炭素原子が60个、サッカーボール状に共有结合した球状分子である。1985年にクロトー、カール、スモーリーによって発见された新物质であり、1996年にノーベル化学赏を受赏している。颁60以外にも炭素原子が70个以上集まった颁70、颁82、颁84??といった高次フラーレンも知られており、このような炭素原子のみから构成された笼状分子のことを総称してフラーレンと呼んでいる。フラーレンは现在のカーボンナノチューブ、グラフェンといったナノカーボン研究のきっかけになった物质である。
*2 フラーレンナノウィスカー:フラーレン分子はファンデルワールス力といった弱い结合力によって规则正しく配列し分子结晶(分子からなる结晶)を作る。このようなフラーレン结晶の中でも结晶外形が细くて长い结晶、特に直径が1ミクロメータ以下のファイバー状、つまり繊维状の结晶のことをフラーレンナノウィスカーと呼んでいる。英语のウィスカーとは猫のひげという意味で、日本语ではひげ结晶とも呼ばれる。2002年に物质材料研究机构の宫泽薫一博士らによって発见され、ユニークな形状から新材料の一つとして注目されている。
*2 フラーレンナノウィスカー:フラーレン分子はファンデルワールス力といった弱い结合力によって规则正しく配列し分子结晶(分子からなる结晶)を作る。このようなフラーレン结晶の中でも结晶外形が细くて长い结晶、特に直径が1ミクロメータ以下のファイバー状、つまり繊维状の结晶のことをフラーレンナノウィスカーと呼んでいる。英语のウィスカーとは猫のひげという意味で、日本语ではひげ结晶とも呼ばれる。2002年に物质材料研究机构の宫泽薫一博士らによって発见され、ユニークな形状から新材料の一つとして注目されている。
掲载论文
Large elastic deformation of C60 nanowhiskers
Yuto Funamori, Ryo Suzuki, Takatsugu Wakahara, Takahito Ohmura, Eri Nakagawa,
Masaru Tachibana
Carbon, 169 (2020)
※本研究は、池谷科学技術振興財団(0291078-A)および JSPS科研費(JP17K06797)、「NIMS連携拠点推進制度」の支援を受けて行われました。
Yuto Funamori, Ryo Suzuki, Takatsugu Wakahara, Takahito Ohmura, Eri Nakagawa,
Masaru Tachibana
Carbon, 169 (2020)
※本研究は、池谷科学技術振興財団(0291078-A)および JSPS科研費(JP17K06797)、「NIMS連携拠点推進制度」の支援を受けて行われました。
问い合わせ先
(研究内容に関するお问い合わせ)
大学院生命ナノシステム科学研究科 教授 橘 勝
贰-尘补颈濒:tachiban@yokohama-cu.ac.jp
罢贰尝:045-787-2307
(取材対応窓口、资料请求など)
研究?产学连携推进课长 山﨑 理絵
贰-尘补颈濒:kenkyupr@yokohama-cu.ac.jp
罢贰尝:045-787-2510 &苍产蝉辫;
横浜市立大学では、教育?研究?医疗?法人経営各分野の取り组みを通じ、持続可能な开発目标(厂顿骋蝉)を支援しています。