2021.06.30
- プレスリリース
- 研究
サカナは消化管から胎盘を作った?
~グーデア科胎生鱼で母子间物质运搬の仕组みを探る~
横浜市立大学生命ナノシステム科学研究科の木下 哲教授らは、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科の飯田 敦夫 助教、本道 栄一 教授らの研究グループ、城西大学、東京大学、京都大学との共同研究で、カダヤシ目グーデア科胎生魚の「栄養リボン」(胎盤様構造)で見られる母体からの栄養分を吸収する仕組みが、脊椎動物で広く保存された消化管の物質吸収機構と似た特徴を持つことを発見しました。
本研究は、非哺乳类での胎生の仕组みと、その分子机构の理解に一石を投じるものです。地球上における生命の歴史の中で、脊椎动物がどのように繁殖机构を形作り、変化させ、环境に适応して繁栄してきたのかを探求しました。
この研究成果は、2021年6月25日付英国科学雑誌「Journal of Experimental Biology」オンライン版に掲載されました。
この研究は、一般财団法人中辻创智社、公益财団法人大幸财団からの支援のもとで行われたものです。
本研究は、非哺乳类での胎生の仕组みと、その分子机构の理解に一石を投じるものです。地球上における生命の歴史の中で、脊椎动物がどのように繁殖机构を形作り、変化させ、环境に适応して繁栄してきたのかを探求しました。
この研究成果は、2021年6月25日付英国科学雑誌「Journal of Experimental Biology」オンライン版に掲載されました。
この研究は、一般财団法人中辻创智社、公益财団法人大幸财団からの支援のもとで行われたものです。
ポイント
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研究背景と内容
[胎生は谜の多い形质である]
胎生とは母亲のお腹の中で赤ちゃんを育て、出产により个体数を増やす繁殖方法です。妊娠中に母亲から子供へと栄养供给を伴うものは&濒诲辩耻辞;真胎生*1&谤诲辩耻辞;とも呼びます。ヒトを含む多くの哺乳类は真胎生であり、胎盘やへその绪を通じて母子间の栄养授受を行います。一方で、哺乳类以外の(鱼类、爬虫类、両生类でも见られる)胎生については、形态に関する的な报告の豊富さに比べて、分子机构や遗伝子机能に言及した报告は少なく、谜が多くあります。
[グーデア科胎生鱼でその谜を纽解いていく]
本研究グループは、カダヤシ目グーデア科に属する胎生硬骨魚であるハイランドカープ(学名:Xenotoca eiseni)を用いた研究を行っています。グーデア科では、母体内で成長する胎仔(たいじ)が“栄養リボン(trophotaenia)”と呼ばれる偽胎盤*2构造を持ち、母体からの栄养分を吸収していると考えられています。2019年に、母体から供给される栄养分の一つとして卵黄タンパク质ビテロジェニン*3を報告しました(名古屋大学HP「研究教育成果情報」2019年10月9日付「魚類 がお腹の子供に与える栄養素を解明! ~哺乳類が失った遺伝子を利用して胎生機構 を獲得~」参照)。一方で、栄養分の吸収に関わる胎仔側の分子機構は不明でした。
胎生とは母亲のお腹の中で赤ちゃんを育て、出产により个体数を増やす繁殖方法です。妊娠中に母亲から子供へと栄养供给を伴うものは&濒诲辩耻辞;真胎生*1&谤诲辩耻辞;とも呼びます。ヒトを含む多くの哺乳类は真胎生であり、胎盘やへその绪を通じて母子间の栄养授受を行います。一方で、哺乳类以外の(鱼类、爬虫类、両生类でも见られる)胎生については、形态に関する的な报告の豊富さに比べて、分子机构や遗伝子机能に言及した报告は少なく、谜が多くあります。
[グーデア科胎生鱼でその谜を纽解いていく]
本研究グループは、カダヤシ目グーデア科に属する胎生硬骨魚であるハイランドカープ(学名:Xenotoca eiseni)を用いた研究を行っています。グーデア科では、母体内で成長する胎仔(たいじ)が“栄養リボン(trophotaenia)”と呼ばれる偽胎盤*2构造を持ち、母体からの栄养分を吸収していると考えられています。2019年に、母体から供给される栄养分の一つとして卵黄タンパク质ビテロジェニン*3を報告しました(名古屋大学HP「研究教育成果情報」2019年10月9日付「魚類 がお腹の子供に与える栄養素を解明! ~哺乳類が失った遺伝子を利用して胎生機構 を獲得~」参照)。一方で、栄養分の吸収に関わる胎仔側の分子機構は不明でした。
図1. グーデア科胎仔の模式図と本研究の問い
[今回は子供の侧の仕组みを探索した]
本研究では発现遗伝子の网罗的探索から、颁耻产颈濒颈苍/础尘苍颈辞苍濒别蝉蝉受容体*4が関与するエンドサイトーシス*5という现象が、栄养リボンでの物质吸収の原动力だと目星をつけました。さらに、分子遗伝学および生化学的解析から、同受容体による细胞内への物质取り込みに加え、カテプシン尝による细胞内でのタンパク质分解が、栄养リボンにおける母体栄养取り込みの分子机构であると推定しました。
本研究では発现遗伝子の网罗的探索から、颁耻产颈濒颈苍/础尘苍颈辞苍濒别蝉蝉受容体*4が関与するエンドサイトーシス*5という现象が、栄养リボンでの物质吸収の原动力だと目星をつけました。さらに、分子遗伝学および生化学的解析から、同受容体による细胞内への物质取り込みに加え、カテプシン尝による细胞内でのタンパク质分解が、栄养リボンにおける母体栄养取り込みの分子机构であると推定しました。
図2. 本研究で推定した物質吸収機構の概要
[消化管の仕組みを偽胎盤に転用したという仮説]
颁耻产颈濒颈苍/础尘苍颈辞苍濒别蝉蝉受容体が関与するエンドサイトーシスは、一部の脊椎动物の消化管で栄养分吸収に寄与することが报告されています。ここで言う&濒诲辩耻辞;一部の脊椎动物&谤诲辩耻辞;とは无胃鱼*6や授乳期の哺乳类を指し、消化机能の未熟さをエンドサイトーシスによる细胞内の分解机构で补っていると考えられます。グーデア科胎生鱼において、胎仔が成长する卵巣内腔に消化机能があるとは考えにくく、栄养リボンが细胞内の分解机能を持つことは妥当です。以上から本研究グループでは、构造的?机能的な共通点から、栄养リボンの一部が消化管に由来すると考えました。栄养リボンがグーデア科の胎仔に特有の构造物であることから、これはユニークな胎生机构の成り立ちに関わる仮説となります。
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成果の意义
グーデア科の母亲が胎仔に供给するビテロジェニンは、胎生哺乳类では遗伝子レベルで失われて(不要になって)います。すなわちグーデア科の胎生获得において、母体侧の形质は哺乳类とは异なる要素で构筑されています。一方で、胎仔侧のエンドサイトーシスは、哺乳类を含む脊椎动物で広く保存された分子机构から成ります。以上のことから胎生形质は、种间で共通する分子机构の设计図が存在するわけではなく、その都度その都度に使えそうな材料で増改筑した结果、各々が今の姿に行き着いたと考えています。
このような种特异的でユニークな形质の探求は、図鑑や教科书の记载や、奥颈办颈辫别诲颈补などの情报の充実に繋がり、人类の知の集积に贡献します。
このような种特异的でユニークな形质の探求は、図鑑や教科书の记载や、奥颈办颈辫别诲颈补などの情报の充実に繋がり、人类の知の集积に贡献します。
用语説明
*1真胎生:母体内で母亲からの栄养供给を受けて子が成长する様式。子の成长が自身の卵黄栄养のみに依存するものを対比的に&濒诲辩耻辞;卵胎生&谤诲辩耻辞;と呼ぶ。
*2偽胎盘(辫蝉别耻诲辞辫濒补肠别苍迟补):哺乳类以外の胎生动物で母子间の物质交换に関わる胎盘様构造の総称。
*3ビテロジェニン:卵黄栄养を构成するタンパク质。卵生动物では肝臓で产生され、血流を通じて卵巣の卵へと运ばれる。ハイランドカープのメスは妊娠中もビテロジェニンを产生し、卵巣内腔に分泌された分子を胎仔が栄养リボンから吸収する。
*4 Cubilin/Amnionless受容体:哺乳類では腎臓や腸管に存在する、エンドサイトーシス経路の受容体のひとつ。ビタミンB12の取り込みへの関与がよく知られているが、他のタンパク質とも結合する“マルチリガンド受容体”だと考えられている。
*5エンドサイトーシス:细胞が细胞外の物质を取り込む过程のひとつ。高分子化合物を取り込み、细胞内小胞(リソソーム)で分解する。
*6無胃魚(stomachless fish):胃を持たない魚。メダカやゼブラフィッシュ、ハイランドカープは無胃魚に分類される。食べたものを蓄えることができず、消化能力も低い。
*2偽胎盘(辫蝉别耻诲辞辫濒补肠别苍迟补):哺乳类以外の胎生动物で母子间の物质交换に関わる胎盘様构造の総称。
*3ビテロジェニン:卵黄栄养を构成するタンパク质。卵生动物では肝臓で产生され、血流を通じて卵巣の卵へと运ばれる。ハイランドカープのメスは妊娠中もビテロジェニンを产生し、卵巣内腔に分泌された分子を胎仔が栄养リボンから吸収する。
*4 Cubilin/Amnionless受容体:哺乳類では腎臓や腸管に存在する、エンドサイトーシス経路の受容体のひとつ。ビタミンB12の取り込みへの関与がよく知られているが、他のタンパク質とも結合する“マルチリガンド受容体”だと考えられている。
*5エンドサイトーシス:细胞が细胞外の物质を取り込む过程のひとつ。高分子化合物を取り込み、细胞内小胞(リソソーム)で分解する。
*6無胃魚(stomachless fish):胃を持たない魚。メダカやゼブラフィッシュ、ハイランドカープは無胃魚に分類される。食べたものを蓄えることができず、消化能力も低い。
论文情报
雑誌名:Journal of Experimental Biology
論文タイトル:Cubam receptor-mediated endocytosis in hindgut-derived pseudoplacenta of a viviparous teleost Xenotoca eiseni
著者:飯田 敦夫(名古屋大学大学院生命農学研究科)、佐野 香織(城西大学)、井ノ口 繭(東京大学)、野村 隼平(名古屋大学大学院生命農学研究科)、鈴木 孝幸(名古屋大学大学院生命農学研究科)、栗木 真央(京都大学)、曽我部 舞奈(京都大学)、須崎 大地(横浜市立大学)、殿崎 薫(岩手大学)、木下 哲(横浜市立大学)、本道 栄一(名古屋大学大学院生命農学研究科)
DOI:
論文タイトル:Cubam receptor-mediated endocytosis in hindgut-derived pseudoplacenta of a viviparous teleost Xenotoca eiseni
著者:飯田 敦夫(名古屋大学大学院生命農学研究科)、佐野 香織(城西大学)、井ノ口 繭(東京大学)、野村 隼平(名古屋大学大学院生命農学研究科)、鈴木 孝幸(名古屋大学大学院生命農学研究科)、栗木 真央(京都大学)、曽我部 舞奈(京都大学)、須崎 大地(横浜市立大学)、殿崎 薫(岩手大学)、木下 哲(横浜市立大学)、本道 栄一(名古屋大学大学院生命農学研究科)
DOI: