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横浜市立大学 YOKOHAMA CITY UNIVERSITY

北东アジアの言语族间の遗伝的および文化的多様性の相関関係を解明

2021.08.19
  • プレスリリース
  • 研究
  • 理学部

北东アジアの言语族间の遗伝的および文化的多様性の相関関係を解明

~文法が遗伝的歴史の指标である可能性を示唆。文化的な関係と遗伝的な関係の违い明确に~

横浜市立大学 木原生物学研究所 客員教授の清水健太郎(スイス?チューリッヒ大学 教授兼任)、東海大学 医学部医学科基礎医学系分子生命科学 助教の松前ひろみ、および慶應義塾大学 環境情報学部 准教授のPatrick E. Savageらの研究グループは、北東アジアとその周辺地域にまたがる11の言語族の関係性について、言語(文法、音韻、語彙)、音楽、ゲノムの5要素からその相関を検証した結果、文法と遺伝的な歴史の間で統計的に有意に相関していることを明らかにしました。

この研究をまとめた論文が、2021年8月18日(水)に『Science Advances』へ掲載されました。

(2021年10月7日更新)
本掲载论文が、Science Advancesのfocusとして、取り上げられました。

本件のポイント

  •  北东アジアとその周辺地域にまたがる11の言语族の言语(文法、音韵、语汇)、音楽、ゲノム比较?分析し、相関関係を検証。语族を超えた解析は初。
  • &苍产蝉辫;文法が遗伝的歴史の文化的な指标である可能性を示唆。文化的な関係と遗伝的な関係の违いが明确になり、人类の歴史の复雑さが浮き彫りに。
  • &苍产蝉辫;言语や文化のバリエーションと进化の过程を明らかにすることは、ヒト特有の行动と社会からの影响について分析する上で重要。

研究の背景

文化はヒト特有の精神活动や行动が表出したものであり、ヒトの进化や多様性を理解する上で键となる指标です。文化はゲノムと似ているようで似ていない进化を遂げます。特に、言语や音楽(歌)は、知られている限り全ての民族集団がもつ文化で、ヒトのコミュニケーションに必须であるため、ヒト特有の进化の痕跡を调べる上で、重要な要素と考えられてきました。また、言语などの高次机能に関连した一部の障害?疾患は一部の遗伝的因子が知られていますが、マウスモデルでは表现型と遗伝型の関连を明らかにすることが难しい场合もあり、进化研究からのアプローチも検讨されています。

ダーウィンは今からちょうど150年前に著書『人間の由来』の中で、言語も生物種と同じように漸進的な変化をしてきたのではないかと論じました。そして、遺伝学の誕生により、ヒトのゲノムを解読することで、ヒトの歴史が明らかになってきました。人類遺伝学者のルイジ?ルーカ?カヴァッリ=スフォルツァは、1980年代に当時利用可能になっていた100程度のヒトゲノム上の座位を調べることで、民族間の遺伝的な系統関係と、言語の分類体系が類似していることを指摘した最初の研究者の1人でした(Cavalli-Sforza et al, 1988, PNAS)。しかし、言語の分類体系は定性的で、多様な文化データを用いて類似性を定量的に検証した研究はこれまでほとんどありませんでした。

カヴァッリ=スフォルツァの研究から30年以上が経った现在、ヒトゲノムが解読され、民族间の遗伝情报が全ゲノムスケールで解析できるようになりました。言语学では、祖先となる语汇を共有する「语族」という分类で言语をまとめ、その语族内の関係は推定できるようになりました。世界には7000以上の言语が知られており、约400の语族に分类されます。例えば英语、ドイツ语、フランス语など、ヨーロッパで话される言语のほとんどは、インド?ヨーロッパ语族という大きな语族に属します。インド?ヨーロッパ语族のような同一语族の语汇に基づいた系统解析が进みましたが、一方で、语汇で遡れる进化的関係性には限界がありました。しかし、特に北东アジアなど东ユーラシアでは、多様な言语族が存在するため、语族を超えた言语の関係は语汇を用いて定量解析ができないという课题がありました。语汇以外の言语の特徴としては、音素2は語族に縛られずに解析ができますが、言語接触によって隣り合う言語同士の音は似てくることも知られています。文法は、比較言語学?言語類型論という分野で体系化されてきましたが、データベースが限られていました。今回の論文の共著者であるBalthasar Bickelらは、2017年に文法と音素に着目した統合データベースを発表しました(Bickel et al, 2017)。本研究では、言語解析にこのデータベースを利用しました。

また、カヴァッリ=スフォルツァの研究に刺激を受けた音楽学者のSteven BrownとPatrick E. Savage(庆应义塾大学环境情报学部)らは、ヒトゲノム同様に、音楽(歌)を定量化する方法を構築してきました(Savage et al, Anal. Approaches to World Music 2012)。そしてこれまで北東アジアの歌の特徴(Savage et al, 2015)や、台湾先住民の歌の類似性と語彙、遺伝的類似性について明らかにしてきました(Brown et al, 2014, Proc. R. Soc. B-Biological Sci)。しかし、語族を超えた解析はこれまでできていませんでした。

研究内容

今回の論文の責任著者である松前ひろみ、太田博樹(东京大学大学院理学系研究科)らはこれまで、東アジア人や縄文人のゲノム解析により、東ユーラシアの古い遺伝的な歴史を明らかにしてきました(McColl et al Science 2018; Gakuhari et al Comm Biol. 2020)。また、近年では、国際的にも東ユーラシアの基層集団として北東アジアに注目が集まっています(Jeong et al, Nat. Ecol. Evol. 2019)。そこで本研究では、北東アジアとその周辺地域にまたがる11の言語族【図1】の関係に焦点を当て、言語、音楽、ゲノムを比較する分析を行いました。 
【図1】北东アジアとその周辺地域にまたがる11の言语族に相当する14言语の分布。日本语族(日本语)、アイヌ语族(北海道アイヌ语)、朝鲜语族(韩国语)、ツングース语族(エヴェン语?エヴェンキ语)、チュクト?カムチャツカ语族(チュクチ语?コリヤーク语)、テュルク语族(ヤクート语)、モンゴル语族(ブリヤート语)、エスキモー?アリュート语族(西グリーンランドイヌイット语)、フィン?ウラル语族(セルクプ语、ガナサン语)、ニブフ语族(ニブフ语)、ユカギール语族(ユカギール语)&苍产蝉辫;
研究グループは、言语(文法、音韵、语汇)、音楽、ゲノムの5要素を主成分分析や主座标分析を用いて、同じデータ形式に落とし込みました。そして5つの要素の类似性の可视化を行いました【図2】。

さらに5要素间の関係を、冗长性解析3により相関を検証しました。その结果、全ての组み合わせの中で、言语のうち、文法の类似性のみが、遗伝的な歴史と统计的に有意に相関していることがわかりました【図3】。
 
【図2】5つの要素〔言语(文法:驳谤补尘尘补谤、音韵:辫丑辞苍辞濒辞驳测、语汇:濒别虫颈肠辞苍)、音楽、ゲノム〕の関係を可视化
図3】5つの要素〔言语(文法、音韵、语汇)、音楽、ゲノム〕を冗长性解析で分析した。*は辫≦0.05を示す。&苍产蝉辫;
では、なぜ言语のうち文法と遗伝的な歴史の间に関连が见られるのか、その説明として以下の3つの仮説を立てました。

(1)最近の文化(言语)接触により、隣り合う言语同士は似てしまった可能性(地理的な自己相関で説明できる场合)
(2)データセットに含まれる言语の中には、同一语族に属する言语が复数あるため、そうした系统的に近い言语のバイアスが反映された可能性
(3)上记2つでは説明できない场合、语族间の古い类似性を示している可能性

上记(1)の仮説については、言语が话されている地域の地理情报を用いて、空间的自己相関の影响を除去するような解析を行いました。上记(2)の仮説については、同一言语族に属する言语はランダムサンプリングすることで、言语间のバイアスを抑える解析を行いました。その结果、ゲノムと文法の类似性の相関は、最近の言语同士の接触や、同一言语族によるバイアスではこのシグナルを説明できず、现在の语族が形成される前に生じた関係を示唆していました【図4】
 
【図4】空間的自己相関と言語間のバイアスを除去したpartial RDA解析の結果。縦軸は2つの因子間の関係(説明変数->応答変数)。横軸は、本研究で得られた相関関係が偶然(ランダムサンプリング)で説明する場合からどのくらいかけ離れているかをZスコアという指標で示しており、1000回繰り返した結果を分布(カーブ)で示している。分布が黒線(y=0)近くにある場合は偶然と区別が付かないが、右側に行けば行くほど、偶然では説明しにくいことを意味する。また1000回の繰り返し実験を行った場合、そのZスコアが1より高い値になった割合を%で示している。更にその差をカルバックライブラー情報量(KLD)という指標でグレースケールで示している。例えば一行目のgrammar -> geneticsは96.7%の再現性をもって文法間の類似性で遺伝的距離を説明できることを意味しており、genetics -> grammarは遺伝的距離で文法間の類似性を説明した場合に90.0%の再現性があったことを示している。 

本研究の意义と今后の展望

本研究成果は、文法が遗伝的歴史の文化的な指标である可能性を示唆していると同时に、文化的な関係と遗伝的な関係の违いを示し、人类の文化や歴史の复雑さを浮き彫りにしていると考えられます。民族间の文化と遗伝的な歴史の関係は西ユーラシアでは研究が进んでいましたが、言语学的复雑性が高い日本を含めた北东アジアでは、方法论的な限界により関係性が分かっていませんでした。本研究により、1980年代にカヴァッリ=スフォルツァが课题とした、定量的に文化を测る手法が新たに确立しました。そして、北东アジアにおいても言语の文法の类似性が、遗伝的関係に遡る情报を维持している可能性が示されました。このことは文化が入り组んでいる北东アジアの歴史の解明を更に推し进める上で重要になると考えられます。

また、デジタル化された文化をデータ解析することにより、北东アジアのように复雑な文化を持った地域の研究に展开できるほか、文化データを有効活用することに繋げられることを示しています。こうした言语や文化のバリエーションと进化の过程を明らかにしていくことは、ヒト特有の行动と社会からの影响について分析する上でも重要だと考えています。


本研究は、日本、スイス、ドイツ、カナダ、英国にまたがる国际的共同研究によって进められ、生物学、言语学、音楽学、统计学の学际的な研究により成果を得ました。なお、本研究成果は、以下の外部资金(抜粋)等によるものです。

?科研費?新学術?共創言語進化 JP18H05080、JP20H05013
?科研费16贬06469
?科研费19碍碍0064
?チューリヒ大学「URPP Evolution in Action」「URPP Language and Space」
?スイス National Center of Competence in Research「Evolving language」

また本研究を行うにあたり、本研究ではこれまで世界的にほとんど存在しなかった、サハリン先住民族のニブフのゲノムデータをSNPアレイを用いて分析しました。このDNAサンプルは、1990年代に速水正憲博士(京都大学ウイルス研究所教授?当時)らが収集し、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)やヒト白血球抗原(HLA)、mtDNAの分析等に利用したもので(Gurtsevitch V, et al. 1995. Int. J. Cancer; Lou et al, 2008 Tissue Antigens; Tajima et al, 2004, J Hum Genet)、故?宝来聡博士(総合研究大学院大学教授?当時)、田辺秀之博士(総合研究大学院大学准教授)らおよびAsia DNA Repository Consortiumによって維持?管理されているサンプルの提供を受けました。
 

用语説明

1  系統解析:生物の遺伝情報(塩基配列またはアミノ酸配列)を用いて、統計的手法により生物が進化してきた歴史を明らかにすること。言語学でも、生物学のアナロジーを用い、語彙を塩基配列に見立て、語彙の歴史を推定することが行われている。

2  音素:ひとつの言語において、意味の違いに関わる最小の音声的な単位

3  冗長性解析(Redundancy Analysis: RDA):変数セット間の関係(説明変数で説明できる応答変数の変動)を抽出する多変量解析法の1つ。ここでは5つの因子(遺伝、語彙、文法、音素、音楽)の組み合わせを分析した。

 

掲载论文

雑誌名 : 『Science Advances』 (2021年8月18日掲載)
タイトル : Exploring correlations in genetic and cultural variation across language families in Northeast Asia
著者  :    松前ひろみa,b,†,‡,*、Peter Ranacher‡,c,d, *、 Patrick E. Savagee,f,*、 Damián E. Blasig,h,i、 Thomas E. Curriej、 小金渕佳江k、 西田奈央l、 佐藤丈寬m、 田辺秀之n、 田嶋敦m、 Steven Browno、 Mark Stonekingp、 清水健太郎a,b,q、 太田博樹k,r,s,*、 Balthasar Bickelg,q, *

a Department of Evolutionary Biology and Environmental Studies, University of Zurich
b 横浜市立大学木原生物学研究所
c Department of Geography, University of Zurich
d URPP Language and Space, University of Zurich
e 庆应义塾大学环境情报学部
f 东京艺术大学
g Department of Comparative Language Science, University of Zurich
h Department of Linguistic and Cultural Evolution, Max Planck Institute for the Science of Human History
i Human Relations Area Files
j Human Behaviour & Cultural Evolution Group, Centre for Ecology & Conservation, Department of Biosciences, University of Exeter
k北里大学大学院医疗系研究科
l 国立国际医疗研究センター
m 金沢大学 医薬保健研究域医学系 革新ゲノム情報学分野
n 総合研究大学院大学 先導科学研究科
o Department of Psychology, Neuroscience & Behaviour, McMaster University
p Department of Evolutionary Genetics, Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology
q Center for the Interdisciplinary Study of Language Evolution (ISLE)
r 北里大学医学部
s 东京大学大学院理学系研究科
Current Address: 東海大学医学部
These authors contributed equally to this work.
* Corresponding authors

DOI :

问い合わせ先

横浜市立大学 広報課
贰-尘补颈濒:koho@yokohama-cu.ac.jp 
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