2021.09.06
- プレスリリース
- 研究
先天性心疾患の女性の出産に関する調査について 死亡や合併症が発生していないことが明らかに
横浜市立大学附属病院循環器内科 仁田 学医師(本学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻在籍)、同大学院データサイエンス研究科 金子 惇講師らの研究グループは、診断群分類(Diagnosis Procedure Combination: DPC)データベース*1を利用した解析により、2017年4月から2018年3月までの1年间に国内の急性期病院に入院し、出产した先天性心疾患の女性について、入院中の死亡例はなく、大きな心臓合併症も起きていない事を明らかにしました。出产を希望する先天性心疾患の女性が、専门医?専门病院による适切な妊娠カウンセリング、妊娠?周产期管理を受けて、安心して妊娠?出产に临むことができる社会构筑の一助となる研究结果といえます。今后の研究により、先天性心疾患のために妊娠?出产へ到达する事のできない女性の実态を明らかにすることで、そこに内在する课题が1つずつ解决されていく事が望まれます。
本研究成果は、BMC Cardiovascular Disordersにオンライン掲載されました。(日本時間2021年8月28日)
本研究成果は、BMC Cardiovascular Disordersにオンライン掲載されました。(日本時間2021年8月28日)
研究成果のポイント
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研究背景
医疗の进歩に伴い、かつて救命することが困难であった、多くの先天性心疾患児*3が助かるようになっています。现在では先天性心疾患児の9割以上が成人期に到达すると考えられています。こうした患者は成人先天性心疾患と呼ばれます。成人先天性心疾患の患者数は増加する一方で、専门医や専门医疗机関が十分に整备されていないという问题を内在しています。さらに、成人期に到达した女性の场合、安全に妊娠?出产することが可能かどうかという问题に遭遇します。健常な女性であっても妊娠中の循环血液量の増加や、出产时の阵痛やいきみにより心臓への负荷が高まります。先天性心疾患を有する女性の场合には、健常女性と比べ心臓の予备能力が低下しているため、妊娠?出产に际しては、心不全*4や不整脉*5、血栓塞栓症を発症させる、あるいは増悪させる危険が高いといえます。これまで、国内ではいくつかの施设から先天性心疾患を有する女性の妊娠や出产に际しての有害事象について报告がなされてきました。しかし、それらはいずれも少数施设の少数例を対象としたものであり、国内全体を网罗するような调査はされていませんでした。そこで、我々は国内の急性期病院の大部分を网罗するデータベースを用いて、出产のために急性期病院に入院した先天性心疾患を有する女性の有害事象を调査しました。
研究内容
診断群分類(Diagnosis Procedure Combination: DPC)データベースを利用して2017年4月から2018年3月までの1年間に国内急性期病院に入院し出産した先天性心疾患を持つ女性を同定し、データを解析したところ、出産に際しての入院中に死亡例はなく、大きな心臓合併症(補助人工心肺*6や大动脉内バルーンポンプ*7を使用するような心不全?循環不全、電気的除細動やペースメーカ、静注抗不整脈薬を要する不整脈 )は起きていない事が明らかとなりました。対象となった先天性心疾患女性は249例で、先天性心疾患の複雑度が中等症?重症に分類される女性が約40%を占めます(図1)。
先天性心疾患の复雑度が高くなるに従い、大学病院で出产する女性の割合が高く、先天性心疾患の复雑度が重症に分类される女性の72%が大学病院で出产している事がデータの分析で判明しました(図2)。また、先天性心疾患の复雑度が高くなるに従い、入院日数が长期化する事も示されました(図3)。
今后の展开
本研究は、国内専門病院により适切な患者选択がなされ、妊娠?周産期を通じて適切な管理が行われた事を示すものであり、先天性心疾患女性が妊娠を希望する場合には、妊娠前から専門医?専門施設へコンサルトすることの重要性が示唆されます。本研究で検討することができたのは、急性期病院へ入院した女性のみとなり、将来的には全ての先天性心疾患女性の妊娠?出産に関する実態を明らかにする分析を行いたいと考えています。
さらに、本研究では出产まで辿り着く事の出来た女性のみを対象としており、心疾患のために妊娠を断念したり、中絶を余仪なくされたり、あるいは流产となった女性の実态については评価できておらず、今后の研究课题と考えています。
なお、本研究は本学附属病院の现役医师が、本学のデータサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻に入学し、データサイエンスを学ぶことで、医疗现场の课题に対して、データからのアプローチとして解析を行ったことによる研究成果です。
さらに、本研究では出产まで辿り着く事の出来た女性のみを対象としており、心疾患のために妊娠を断念したり、中絶を余仪なくされたり、あるいは流产となった女性の実态については评価できておらず、今后の研究课题と考えています。
なお、本研究は本学附属病院の现役医师が、本学のデータサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻に入学し、データサイエンスを学ぶことで、医疗现场の课题に対して、データからのアプローチとして解析を行ったことによる研究成果です。
论文情报
タイトル: Outcomes of women with congenital heart disease admitted to acute-care hospitals for delivery in Japan: a retrospective cohort study using nationwide Japanese diagnosis procedure combination database
著者: 仁田 学、清水 沙友里、金子 惇、伏見 清秀、植田 真一郎
掲載雑誌: BMC Cardiovascular Disorders
顿翱滨: https://doi.org/10.1186/s12872-021-02222-z
参考
用语説明
*1診断群分類DPC(Diagnosis Procedure Combination)データベース:全国の急性期医療機関から収集された入院患者情報のデータベースで、年間700万を超える症例が登録され、診療報酬明細データとともに、診断や治療方法、入院期間、退院状況など、様々な情報が含まれる。
*2患者选択:妊娠?出产のリスクが高く、妊娠の禁忌に该当する女性に対しては避妊指导を行ったり、妊娠した场合には、その継続を断念して顶き、母体を危険に晒さないよう働きかけたりすること。
*3 先天性心疾患:胎児期に心臓の発達?形成での障害のために生じる心疾患。単純な心奇形から複雑心奇形まで多数の疾患が存在する。
*4 心不全:心臓の機能が低下することで、十分な血液量を全身に供給できない状態。症状として動悸、息切れ、呼吸困難、むくみ、疲れやすさなどがある。
*5 不整脈:心拍が正常でない状態。心拍数が異常に速くなる頻脈性不整脈と異常に遅くなる徐脈性不整脈とに大別される。
*6 補助人工心肺:心臓や肺の機能が高度に低下した場合に、全身への血液?酸素供給を肩代わりするために使用する機器。重症化したCovid-19患者に対して使用されることで世間に知られるようになったECMO(エクモ)に該当。
*7大动脉内バルーンポンプ:心臓に対する负担を軽减させる目的で心臓の动きに同期させて大动脉内で収缩?拡张させる风船。
参考文献
1.Shiina Y, Toyoda T, Kawasoe Y, Tateno S, Shirai T, Wakisaka Y, et al. Prevalence of adult patients with congenital heart disease in Japan. Int J Cardiol. 2011;146(1):13-6.
2.Nitta M, Ochiai R, Nakano S, Nakashima R, Matsumoto K, Sugano T, et al. Characteristics of patients with adult congenital heart disease treated by non-specialized doctors: The potential loss of follow-up. J Cardiol. 2021;77(1):17-22.
3.Robson SC, Hunter S, Boys RJ, Dunlop W. Serial study of factors influencing changes in cardiac output during human pregnancy. Am J Physiol. 1989;256(4 Pt 2):H1060-5.
4.Takatsuki S, Furutani Y, Inai K, Kobayashi T, Inuzuka R, Uyeda T, et al. Pregnancy and Delivery in Patients With Repaired Congenital Heart Disease — A Retrospective Japanese Multicenter Study —. Circulation Journal. 2020;84(12):2270-4.
*1診断群分類DPC(Diagnosis Procedure Combination)データベース:全国の急性期医療機関から収集された入院患者情報のデータベースで、年間700万を超える症例が登録され、診療報酬明細データとともに、診断や治療方法、入院期間、退院状況など、様々な情報が含まれる。
*2患者选択:妊娠?出产のリスクが高く、妊娠の禁忌に该当する女性に対しては避妊指导を行ったり、妊娠した场合には、その継続を断念して顶き、母体を危険に晒さないよう働きかけたりすること。
*3 先天性心疾患:胎児期に心臓の発達?形成での障害のために生じる心疾患。単純な心奇形から複雑心奇形まで多数の疾患が存在する。
*4 心不全:心臓の機能が低下することで、十分な血液量を全身に供給できない状態。症状として動悸、息切れ、呼吸困難、むくみ、疲れやすさなどがある。
*5 不整脈:心拍が正常でない状態。心拍数が異常に速くなる頻脈性不整脈と異常に遅くなる徐脈性不整脈とに大別される。
*6 補助人工心肺:心臓や肺の機能が高度に低下した場合に、全身への血液?酸素供給を肩代わりするために使用する機器。重症化したCovid-19患者に対して使用されることで世間に知られるようになったECMO(エクモ)に該当。
*7大动脉内バルーンポンプ:心臓に対する负担を軽减させる目的で心臓の动きに同期させて大动脉内で収缩?拡张させる风船。
参考文献
1.Shiina Y, Toyoda T, Kawasoe Y, Tateno S, Shirai T, Wakisaka Y, et al. Prevalence of adult patients with congenital heart disease in Japan. Int J Cardiol. 2011;146(1):13-6.
2.Nitta M, Ochiai R, Nakano S, Nakashima R, Matsumoto K, Sugano T, et al. Characteristics of patients with adult congenital heart disease treated by non-specialized doctors: The potential loss of follow-up. J Cardiol. 2021;77(1):17-22.
3.Robson SC, Hunter S, Boys RJ, Dunlop W. Serial study of factors influencing changes in cardiac output during human pregnancy. Am J Physiol. 1989;256(4 Pt 2):H1060-5.
4.Takatsuki S, Furutani Y, Inai K, Kobayashi T, Inuzuka R, Uyeda T, et al. Pregnancy and Delivery in Patients With Repaired Congenital Heart Disease — A Retrospective Japanese Multicenter Study —. Circulation Journal. 2020;84(12):2270-4.