2023.06.08
- プレスリリース
- 研究
植物でのオプトジェネティクスに新时代到来
&苍产蝉辫;【本件のポイント】
多细胞生物である植物や动物は、からだを构成するたくさんの细胞同士がオーケストラのように协调して働くことで生きています。受精卵から个体が形作られていく过程も细胞间の相互作用が必要であり、また、さまざまなストレス応答も同様です。一般に、生命の设计図である遗伝子一つ一つの机能は、その遗伝子が机能しない状态になった生物(机能欠损変异体)を调べることで理解されてきました。一方で、「无い状态」からその机能を予测するだけでなく、「ある状态」を调べなければわからないことも多々あるため、その遗伝子を全身で过剰に発现させるなどして、その影响を调べることも行われます。
多细胞生物の中で、どの细胞がどんな役割を果たしているのかは生物学の中では古くからある非常に大きな问いでした。これは现代生命科学で言えば、どの细胞で、どの遗伝子が、どんな役割を果たしているかということになります。遗伝学が発展しても、特定の遗伝子の全身的な欠损や过剰発现だけではこういった细胞间の相互作用はなかなかわからず、古くからキメラ*の作成などで各细胞の役割解明が试みられてきました。近年では、遗伝子组换え技术を用いて、特定の遗伝子をある特定の细胞种でのみ発现させたり、化学物质など特定の刺激に応じて局所的に発现させる技术が大きな役割を果たしてきましたが、それでも细胞种の制限や化学物质処理技术の限界などもあり、一细胞レベルで遗伝子発现を制御することは困难でした。近年、动物分野では、植物由来の光受容体を人為的に改変して动物细胞で発现させた上で特定の波长の光を一细胞などの局所に照射することにより、一细胞レベルで遗伝子発现をコントロールするオプトジェネティクス*が隆盛となっていますが、元々それら受容体を持つ植物では可视光を使ったオプトジェネティクス技术の利用は困难を极めていました(図1)。
一方、本共同研究グループの亀井らは、顕微鏡視野下で標的一細胞に赤外レーザーを照射することができるIR-LEGO(Infrared laser-evoked gene operator)装置を開発し、さまざまな動植物種において標的となる一細胞でヒートショックを誘導して熱応答性プロモーター制御下で目的の遺伝子発現を誘導する技術を確立していました。この技術は、動物はもちろん、植物での新たなオプトジェネティクス技術として期待されていましたが、植物特有の細胞壁を持った大きな細胞サイズなどの課題もあり、標準プロトコールのようなものもなく、誰もが使える状態ではありませんでした。また、植物分野で汎用されていた熱応答性プロモーター(HSP18.2プロモーター)が定常时にも一部の细胞で活性を持っていたために、特に、诱导して机能を调べようとしている遗伝子が成长や形态に悪影响を与えたり、细胞毒性を持っている场合など、非诱导时の望まない遗伝子発现が问题となる课题もありました(図1)。
このような中、本共同研究グループでは、1)従来よりも热応答により特化した热诱导性プロモーター领域(辫HSP18.2v2)の発见、2)ステロイドホルモン受容体融合型颁搁贰组换え酵素とloxP配列の利用、3)数多くの試行データからデータサイエンス的技法を用いての最適なレーザー出力値の予測、の3点を融合させることで、モデル植物であるシロイヌナズナでの再現性の高い標的一細胞遺伝子発現誘導プロトコールを確立しました(図2)。この手法をもとに、根の表皮細胞?皮層細胞?内皮細胞、葉の表皮細胞?葉肉細胞?孔辺細胞というさまざまな細胞種において、高い確率で狙った一細胞での遺伝子発現を誘導することに成功しました(図2)。本手法で用いた、ヒートショックとステロイドホルモンという二重ロック機構によるゲノム組換えシステムは、研究の妨げになっていた非誘導時の望まない遺伝子発現が検出限界以下であり、植物体の中の狙った一細胞でのさまざまな機能を持った遺伝子発現のON?OFF制御はもちろん、一細胞レベルでのゲノム編集などに応用されることが期待されます。また、実データからのデータサイエンスに基づく解析は、細胞サイズごとの適切なレーザー出力値も予測しており、大小さまざまなサイズバリエーションを持つ植物細胞を実験対象にする上での重要な指針も示しており、植物を用いたオプトジェネティクスの標準プロトコールとなるものです。以上のように、本成果は、植物分野ではまだ発展途上の技術であるオプトジェネティクスの重要なブレークスルーとなるものであると言えます。なお、本研究は以下に示す研究费(主要なものを抜粋)による成果です。
- 为重才覚特任助教(横浜市立大学?木原生物学研究所)、友井拓実博士研究员(宇都宫大学イノベーション支援センター?工学部)、亀井保博教授(基础生物学研究所超阶层生物学センター)、别役重之准教授(龙谷大学农学部生命科学科)らを中心とした共同研究グループが、植物体の中の任意の一细胞で特定の遗伝子発现を诱导することができる技术を确立。
- 狙った一细胞での遗伝子発现の翱狈?翱贵贵やゲノム编集なども可能になることが想定され、植物多细胞组织での细胞と细胞のやりとり(细胞间相互作用)を介したさまざまな生命活动のメカニズムをこれまでにない精细さで理解できるようになることや、この技术を用いた全く新しい研究手法の开発や品种改良につながる新たな研究技术の开発などが期待される。
- 本成果は、6月5日付でFrontiers in Plant Scienceに発表された。
多细胞生物である植物や动物は、からだを构成するたくさんの细胞同士がオーケストラのように协调して働くことで生きています。受精卵から个体が形作られていく过程も细胞间の相互作用が必要であり、また、さまざまなストレス応答も同様です。一般に、生命の设计図である遗伝子一つ一つの机能は、その遗伝子が机能しない状态になった生物(机能欠损変异体)を调べることで理解されてきました。一方で、「无い状态」からその机能を予测するだけでなく、「ある状态」を调べなければわからないことも多々あるため、その遗伝子を全身で过剰に発现させるなどして、その影响を调べることも行われます。
多细胞生物の中で、どの细胞がどんな役割を果たしているのかは生物学の中では古くからある非常に大きな问いでした。これは现代生命科学で言えば、どの细胞で、どの遗伝子が、どんな役割を果たしているかということになります。遗伝学が発展しても、特定の遗伝子の全身的な欠损や过剰発现だけではこういった细胞间の相互作用はなかなかわからず、古くからキメラ*の作成などで各细胞の役割解明が试みられてきました。近年では、遗伝子组换え技术を用いて、特定の遗伝子をある特定の细胞种でのみ発现させたり、化学物质など特定の刺激に応じて局所的に発现させる技术が大きな役割を果たしてきましたが、それでも细胞种の制限や化学物质処理技术の限界などもあり、一细胞レベルで遗伝子発现を制御することは困难でした。近年、动物分野では、植物由来の光受容体を人為的に改変して动物细胞で発现させた上で特定の波长の光を一细胞などの局所に照射することにより、一细胞レベルで遗伝子発现をコントロールするオプトジェネティクス*が隆盛となっていますが、元々それら受容体を持つ植物では可视光を使ったオプトジェネティクス技术の利用は困难を极めていました(図1)。
一方、本共同研究グループの亀井らは、顕微鏡視野下で標的一細胞に赤外レーザーを照射することができるIR-LEGO(Infrared laser-evoked gene operator)装置を開発し、さまざまな動植物種において標的となる一細胞でヒートショックを誘導して熱応答性プロモーター制御下で目的の遺伝子発現を誘導する技術を確立していました。この技術は、動物はもちろん、植物での新たなオプトジェネティクス技術として期待されていましたが、植物特有の細胞壁を持った大きな細胞サイズなどの課題もあり、標準プロトコールのようなものもなく、誰もが使える状態ではありませんでした。また、植物分野で汎用されていた熱応答性プロモーター(HSP18.2プロモーター)が定常时にも一部の细胞で活性を持っていたために、特に、诱导して机能を调べようとしている遗伝子が成长や形态に悪影响を与えたり、细胞毒性を持っている场合など、非诱导时の望まない遗伝子発现が问题となる课题もありました(図1)。
このような中、本共同研究グループでは、1)従来よりも热応答により特化した热诱导性プロモーター领域(辫HSP18.2v2)の発见、2)ステロイドホルモン受容体融合型颁搁贰组换え酵素とloxP配列の利用、3)数多くの試行データからデータサイエンス的技法を用いての最適なレーザー出力値の予測、の3点を融合させることで、モデル植物であるシロイヌナズナでの再現性の高い標的一細胞遺伝子発現誘導プロトコールを確立しました(図2)。この手法をもとに、根の表皮細胞?皮層細胞?内皮細胞、葉の表皮細胞?葉肉細胞?孔辺細胞というさまざまな細胞種において、高い確率で狙った一細胞での遺伝子発現を誘導することに成功しました(図2)。本手法で用いた、ヒートショックとステロイドホルモンという二重ロック機構によるゲノム組換えシステムは、研究の妨げになっていた非誘導時の望まない遺伝子発現が検出限界以下であり、植物体の中の狙った一細胞でのさまざまな機能を持った遺伝子発現のON?OFF制御はもちろん、一細胞レベルでのゲノム編集などに応用されることが期待されます。また、実データからのデータサイエンスに基づく解析は、細胞サイズごとの適切なレーザー出力値も予測しており、大小さまざまなサイズバリエーションを持つ植物細胞を実験対象にする上での重要な指針も示しており、植物を用いたオプトジェネティクスの標準プロトコールとなるものです。以上のように、本成果は、植物分野ではまだ発展途上の技術であるオプトジェネティクスの重要なブレークスルーとなるものであると言えます。なお、本研究は以下に示す研究费(主要なものを抜粋)による成果です。
1.原着论文情报
標 題:Targeted single-cell gene induction by optimizing the dually regulated CRE/loxP system by a newly defined heat- shock promoter and the steroid hormone in Arabidopsis thaliana
著者名:Takumi Tomoi1,2,3†, Toshiaki Tameshige4,5†, Eriko Betsuyaku6, Saki Hamada7, Joe Sakamoto3,8, Naoyuki Uchida9,10, Keiko U Torii10,11, Kentaro K Shimizu4,12, Yosuke Tamada2,13,14, Hiroko Urawa15,16, Kiyotaka Okada16,17, Hiroo Fukuda7,18, Kiyoshi Tatematsu16,19, Yasuhiro Kamei3,14,19,20*, Shigeyuki Betsuyaku6*
1Center for Innovation Support, Institute for Social Innovation and Cooperation, Utsunomiya University, Utsunomiya, Japan, 2School of Engineering, Utsunomiya University, Utsunomiya, Japan, 3Laboratory for Biothermology, National Institute for Basic Biology, Okazaki, Japan, 4Kihara Institute for Biological Research (KIBR), 麻豆官网, Yokohama, Japan, 5Division of Biological Sciences, Graduate School of Science and Technology, Nara Institute of Science and Technology, Ikoma, Japan, 6Department of Life Science, Faculty of Agriculture, Ryukoku University, Otsu, Japan, 7Department of Biological Sciences, Graduate School of Science, The University of Tokyo, Tokyo, Japan, 8Biophotonics Research Group, Exploratory Research Center on Life and Living Systems (ExCELLS), Okazaki, Japan, 9Center for Gene Research, Nagoya University, Nagoya, Japan, 10Institute of Transformative Bio-Molecules (WPI-ITbM), Nagoya University, Nagoya, Japan, 11Department of Molecular Biosciences and Howard Hughes Medical Institute, The University of Texas at Austin, Austin, Texas, USA, 12Department of Evolutionary Biology and Environmental Studies, University of Zurich, Zürich, Switzerland, 13Center for Optical Research and Education (CORE), Utsunomiya University, Utsunomiya, Japan, 14Robotics, Engineering and Agriculture-technology Laboratory (REAL), Utsunomiya University, Utsunomiya, Japan, 15Faculty of Education, Gifu Shotoku Gakuen University, Gifu, Japan, 16Laboratory of Plant Organ Development, National Institute for Basic Biology, Okazaki, Japan, 17Ryukoku Extention Center Shiga, Ryukoku University, Otsu, Japan, 18Department of Bioscience and Biotechnology, Faculty of Bioenvironmental Sciences, Kyoto University of Advanced Science, Kyoto, Japan, 19The Graduate University for Advanced Studies (SOKENDAI), Okazaki, Japan, 20Optics and Imaging Facility, Trans-Scale Biology Center, National Institute for Basic Biology, Okazaki, Japan
†These authors contributed equally to this work and share first authorship
* Correspondence
掲載先:Frontiers in Plant Science 5 June 2023 Volume 14 - 2023
DOI:
標 題:Targeted single-cell gene induction by optimizing the dually regulated CRE/loxP system by a newly defined heat- shock promoter and the steroid hormone in Arabidopsis thaliana
著者名:Takumi Tomoi1,2,3†, Toshiaki Tameshige4,5†, Eriko Betsuyaku6, Saki Hamada7, Joe Sakamoto3,8, Naoyuki Uchida9,10, Keiko U Torii10,11, Kentaro K Shimizu4,12, Yosuke Tamada2,13,14, Hiroko Urawa15,16, Kiyotaka Okada16,17, Hiroo Fukuda7,18, Kiyoshi Tatematsu16,19, Yasuhiro Kamei3,14,19,20*, Shigeyuki Betsuyaku6*
1Center for Innovation Support, Institute for Social Innovation and Cooperation, Utsunomiya University, Utsunomiya, Japan, 2School of Engineering, Utsunomiya University, Utsunomiya, Japan, 3Laboratory for Biothermology, National Institute for Basic Biology, Okazaki, Japan, 4Kihara Institute for Biological Research (KIBR), 麻豆官网, Yokohama, Japan, 5Division of Biological Sciences, Graduate School of Science and Technology, Nara Institute of Science and Technology, Ikoma, Japan, 6Department of Life Science, Faculty of Agriculture, Ryukoku University, Otsu, Japan, 7Department of Biological Sciences, Graduate School of Science, The University of Tokyo, Tokyo, Japan, 8Biophotonics Research Group, Exploratory Research Center on Life and Living Systems (ExCELLS), Okazaki, Japan, 9Center for Gene Research, Nagoya University, Nagoya, Japan, 10Institute of Transformative Bio-Molecules (WPI-ITbM), Nagoya University, Nagoya, Japan, 11Department of Molecular Biosciences and Howard Hughes Medical Institute, The University of Texas at Austin, Austin, Texas, USA, 12Department of Evolutionary Biology and Environmental Studies, University of Zurich, Zürich, Switzerland, 13Center for Optical Research and Education (CORE), Utsunomiya University, Utsunomiya, Japan, 14Robotics, Engineering and Agriculture-technology Laboratory (REAL), Utsunomiya University, Utsunomiya, Japan, 15Faculty of Education, Gifu Shotoku Gakuen University, Gifu, Japan, 16Laboratory of Plant Organ Development, National Institute for Basic Biology, Okazaki, Japan, 17Ryukoku Extention Center Shiga, Ryukoku University, Otsu, Japan, 18Department of Bioscience and Biotechnology, Faculty of Bioenvironmental Sciences, Kyoto University of Advanced Science, Kyoto, Japan, 19The Graduate University for Advanced Studies (SOKENDAI), Okazaki, Japan, 20Optics and Imaging Facility, Trans-Scale Biology Center, National Institute for Basic Biology, Okazaki, Japan
†These authors contributed equally to this work and share first authorship
* Correspondence
掲載先:Frontiers in Plant Science 5 June 2023 Volume 14 - 2023
DOI:
2.用语解説
*キメラ
异种の细胞や同种で系统の异なる细胞が混ざった状态の体をもつ生物。接ぎ木も异なる植物を繋いでいる场合は一种のキメラと言える。
*オプトジェネティクス
光で细胞状态を変化させるような外来遗伝子を导入して発现させ、光によって细胞状态を操作する実験技术の総称。光遗伝学ともいう。可视光を利用して动物の神経细胞などを操作する技术を指す场合が多い。本研究では目に见えない赤外光を利用する技术开発を进めることで、オプトジェネティクス分野の発展に贡献することも目的の一つである。
3. 謝辞
主要な研究费リスト
[友井]研究活動スタート支援20K22572、[爲重]若手研究20K15807、 [亀井]挑戦的研究(開拓)17H06258 、基盤(B)20H02586、、学術変革領域研究(A)20H05886、[別役]研究活動スタート支援22880008、若手(B)23780040、JSTさきがけ「細胞機能の構成的理解と制御」、JST ERATO(JPMJER1502)、学術変革領域研究(B) 23H03847、[亀井?別役]基礎生物学研究所「統合イメージング共同利用研究」(課題番号:18-506、 19-515、20-506)
また、本研究は基础生物学研究所超阶层生物学センターモデル生物研究支援室(植物)ならびにバイオイメージング解析室による支援を受けました。&苍产蝉辫;
*キメラ
异种の细胞や同种で系统の异なる细胞が混ざった状态の体をもつ生物。接ぎ木も异なる植物を繋いでいる场合は一种のキメラと言える。
*オプトジェネティクス
光で细胞状态を変化させるような外来遗伝子を导入して発现させ、光によって细胞状态を操作する実験技术の総称。光遗伝学ともいう。可视光を利用して动物の神経细胞などを操作する技术を指す场合が多い。本研究では目に见えない赤外光を利用する技术开発を进めることで、オプトジェネティクス分野の発展に贡献することも目的の一つである。
3. 謝辞
主要な研究费リスト
[友井]研究活動スタート支援20K22572、[爲重]若手研究20K15807、 [亀井]挑戦的研究(開拓)17H06258 、基盤(B)20H02586、、学術変革領域研究(A)20H05886、[別役]研究活動スタート支援22880008、若手(B)23780040、JSTさきがけ「細胞機能の構成的理解と制御」、JST ERATO(JPMJER1502)、学術変革領域研究(B) 23H03847、[亀井?別役]基礎生物学研究所「統合イメージング共同利用研究」(課題番号:18-506、 19-515、20-506)
また、本研究は基础生物学研究所超阶层生物学センターモデル生物研究支援室(植物)ならびにバイオイメージング解析室による支援を受けました。&苍产蝉辫;
