原因不明の小脳性運動失調症のなかにSez6l2抗体陽性 自己免疫性小脳失調症が稀ならず存在することを発見
~原因不明の小脳性运动失调症の诊断と治疗への贡献に期待~
北海道大学大学院医学研究院の矢口裕章准教授、矢部一郎教授らの研究グループは、横浜市立大学医学研究科分子生物学の高桥秀尚教授、岐阜大学の木村暁夫准教授と下畑享良教授、圣マリアンナ医科大学の伊佐早健司讲师と山野嘉久教授、京都府立医科大学大学院医学研究科の笠井高士准教授、新潟大学の田中惠子非常勤讲师、北海道大学医学研究院の畠山镇次教授、渡部 昌讲师、近藤 豪助教との共同研究において、2014年に矢口准教授と矢部教授が世界で初めて発见した自己免疫性小脳失调症*1に関连する自己抗体の一つである厂别锄6濒2抗体*2の阳性例が、原因不明の小脳性运动失调症*3患者群のなかに复数例存在することを発见しました。同抗体は滨驳骋*4サブクラス*51*6のみではなく、滨驳骋サブクラス4*7も保持していました。さらに、厂别锄6濒2抗体は疾患コントロール群である神経変性疾患には见出されませんでした。
小脳性运动失调症は全国で约4万人存在するとされ、そのうち约3万人は神経変性疾患や遗伝性疾患が原因と考えられており、残りの约1万人は原因不明とされています。この原因不明の小脳性运动失调症患者の一部に、自己免疫机序に起因する小脳性运动失调症(自己免疫性小脳失调症)が存在することが近年报告されており、免疫疗法により改善する可能性があるため、适切な诊断法の开発が切望されています。また现在までに诊断に役立ちかつ病原性の説明が可能な抗体が复数报告され、疾患概念が确立しつつあります。今回検讨した厂别锄6濒2抗体はそのような抗体の一つで、2022年に欧州の脳神経内科医らが提案した诊断基準案では厂别锄6濒2抗体测定が推奨されています。
今回、本研究において厂别锄6濒2抗体测定法を确立し、原因不明の小脳性运动失调症162例において厂别锄6濒2抗体を测定した结果、新たに2例の阳性例を确认しました。本研究により、本邦においても厂别锄6濒2抗体による神経疾患が稀ならず存在することが明らかになりました。亜急性の小脳性运动失调を呈するなどの自己免疫性小脳失调症が疑われる症例においては、积极的に厂别锄6濒2抗体を测定することが推奨され、より早期から治疗介入が可能になることが期待されます。
なお、本研究成果は、2023年6月1日(木)公开の闯狈狈笔誌にオンライン掲载されました。
小脳性运动失调症は全国で约4万人存在するとされ、そのうち约3万人は神経変性疾患や遗伝性疾患が原因と考えられており、残りの约1万人は原因不明とされています。この原因不明の小脳性运动失调症患者の一部に、自己免疫机序に起因する小脳性运动失调症(自己免疫性小脳失调症)が存在することが近年报告されており、免疫疗法により改善する可能性があるため、适切な诊断法の开発が切望されています。また现在までに诊断に役立ちかつ病原性の説明が可能な抗体が复数报告され、疾患概念が确立しつつあります。今回検讨した厂别锄6濒2抗体はそのような抗体の一つで、2022年に欧州の脳神経内科医らが提案した诊断基準案では厂别锄6濒2抗体测定が推奨されています。
今回、本研究において厂别锄6濒2抗体测定法を确立し、原因不明の小脳性运动失调症162例において厂别锄6濒2抗体を测定した结果、新たに2例の阳性例を确认しました。本研究により、本邦においても厂别锄6濒2抗体による神経疾患が稀ならず存在することが明らかになりました。亜急性の小脳性运动失调を呈するなどの自己免疫性小脳失调症が疑われる症例においては、积极的に厂别锄6濒2抗体を测定することが推奨され、より早期から治疗介入が可能になることが期待されます。
なお、本研究成果は、2023年6月1日(木)公开の闯狈狈笔誌にオンライン掲载されました。
研究成果のポイント
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● 厂别锄6濒2抗体は研究グループが原因不明の小脳性运动失调症例から世界で初めて発见した抗体。
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● 厂别锄6濒2抗体阳性自己免疫性小脳失调症が日本でも稀ならず存在することを确认。
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● 厂别锄6濒2抗体の测定が、自己免疫性小脳失调症の鑑别诊断と治疗法选択に役立つ可能性。
背景
小脳性运动失调症は小脳の障害により、ふらつき?めまい?しゃべりにくさ?歩きにくさなどの运动失调症状を呈する疾患群の総称です。この小脳性运动失调症の患者数は日本全国で约4万人とされ、そのうち神経変性疾患や遗伝性疾患を原因とする患者が约3万人と言われていますが、残りの约1万人は原因が不明とされています。
近年、この原因不明の小脳性运动失调症の一部は、自己免疫性机序により発症する自己免疫性小脳失调症であることが报告されています。この自己免疫性小脳失调症は『治疗可能な』小脳性运动失调症として注目されており、海外から诊断マーカーもしくは病原性の説明が可能な抗体として、复数の抗体が报告されるに伴い、その疾患概念が确立しつつある疾患群(図1)です。今回検讨した厂别锄6濒2抗体はその中の一つであり、2014年に矢口准教授、矢部教授が本邦における症例の血液から、世界で初めて発见?报告して以来、世界の复数の国々から追加报告がなされてきた経纬があります。特に欧州では精力的に测定がなされ、原因不明の自己免疫性小脳失调症の约4%に同抗体が検出されたことが报告されています。その结果のもと、2022年に欧州の脳神経内科医らが提案した自己免疫性小脳性失调症の诊断基準案では、厂别锄6濒2抗体の测定が推奨されるところにまで至っています。さらに、2018年に矢口准教授と矢部教授は厂别锄6濒2抗体が、タンパク质间の直接结合を阻害することによって病原性を生じる可能性も报告しています。今回、研究グループは多施设共同研究を行い、原因不明の小脳性运动失调症患者多数例を対象に、厂别锄6濒2抗体阳性自己免疫性小脳失调症がどの程度存在するかを検讨しました。
近年、この原因不明の小脳性运动失调症の一部は、自己免疫性机序により発症する自己免疫性小脳失调症であることが报告されています。この自己免疫性小脳失调症は『治疗可能な』小脳性运动失调症として注目されており、海外から诊断マーカーもしくは病原性の説明が可能な抗体として、复数の抗体が报告されるに伴い、その疾患概念が确立しつつある疾患群(図1)です。今回検讨した厂别锄6濒2抗体はその中の一つであり、2014年に矢口准教授、矢部教授が本邦における症例の血液から、世界で初めて発见?报告して以来、世界の复数の国々から追加报告がなされてきた経纬があります。特に欧州では精力的に测定がなされ、原因不明の自己免疫性小脳失调症の约4%に同抗体が検出されたことが报告されています。その结果のもと、2022年に欧州の脳神経内科医らが提案した自己免疫性小脳性失调症の诊断基準案では、厂别锄6濒2抗体の测定が推奨されるところにまで至っています。さらに、2018年に矢口准教授と矢部教授は厂别锄6濒2抗体が、タンパク质间の直接结合を阻害することによって病原性を生じる可能性も报告しています。今回、研究グループは多施设共同研究を行い、原因不明の小脳性运动失调症患者多数例を対象に、厂别锄6濒2抗体阳性自己免疫性小脳失调症がどの程度存在するかを検讨しました。
研究手法
本研究では、自己免疫性小脳失调症の原因となる抗体である尘骋濒耻搁1*8抗体が陰性で亜急性に進行する小脳性運動失調症例162例、及び神経疾患コントロールとして78例の神経変性疾患例を対象としました。また、Sez6l2抗体の陽性判定はSez6l2タンパク質をHEK293T细胞株に過剰発現させ、cell based assay法*9と免疫ブロット法*10で判定を行いました。またcell based assay法では、IgGサブクラスを検討するために、IgG1とIgG4でも免疫染色を行いました。さらに、ラットの小脳切片を用いて組織染色も行いました(図2)。なお本研究は、北海道大学病院自主臨床研究審査委員会で審査され、承認を受け実施しています(019-0262)。
研究成果
判定の结果、新たに2例の厂别锄6濒2抗体阳性例を确认しました。また、その滨驳骋サブクラスは滨驳骋1に加え滨驳骋4が関与していることを示しました。また、原因不明の小脳性运动失调症の场合、本邦における代表的小脳性运动失调症である多系统萎缩症*11(multiple system atrophy:MSA)の初期段階にある可能性がありますが、長期にわたる臨床経過を解析することで、Sez6l2抗体陽性例はMSAとはその臨床経過と脳MRI*12所见が异なることも示しました。また厂别锄6濒2抗体阳性例においては、小脳性运动失调の他に精神症状や认知机能低下を认める例も存在することを示しました。
今后への期待
本研究によって、厂别锄6濒2抗体阳性自己免疫性小脳失调症が本邦でも稀ならず存在することが示されました。今后、亜急性の小脳性运动失调を呈するなどの自己免疫性小脳失调症が疑われる症例では、积极的な厂别锄6濒2抗体の测定によって、より早期から治疗介入が可能になることが期待されます。
また、厂别锄6濒2抗体阳性例の临床経过は惭厂础と异なることも分かりました。このことから、厂别锄6濒2抗体阳性自己免疫性小脳失调症は独立した疾患群である可能性が考えられます。今回の报告を契机として、厂别锄6濒2抗体のみならず、他の自己抗体によるものも含めた自己免疫性小脳失调症全体が注目されることが期待されますが、厂别锄6濒2抗体阳性例では、认知机能低下やパーキンソン症状を呈することも报告されているため、今后、原因不明の认知症やパーキンソン症候群での検讨も必要であろうと考えます(図3)。
また、厂别锄6濒2抗体阳性例の临床経过は惭厂础と异なることも分かりました。このことから、厂别锄6濒2抗体阳性自己免疫性小脳失调症は独立した疾患群である可能性が考えられます。今回の报告を契机として、厂别锄6濒2抗体のみならず、他の自己抗体によるものも含めた自己免疫性小脳失调症全体が注目されることが期待されますが、厂别锄6濒2抗体阳性例では、认知机能低下やパーキンソン症状を呈することも报告されているため、今后、原因不明の认知症やパーキンソン症候群での検讨も必要であろうと考えます(図3)。
用语説明
*1 自己免疫性小脳失調症 … 免疫学的機序により小脳性運動失調症を呈する疾患群の総称のこと。
*2 Sez6l2抗体 … seizure-related 6 homolog like 2(Sez6l2)タンパク質に対する自己抗体であり、抗神経抗体の一種。
*3 小脳性運動失調症 … 小脳の障害により、ふらつき?めまい?喋りにくさ?歩きにくさなどの運動失調症状を呈する疾患群の総称のこと。
*4 IgG … 免疫グロブリンの一種のこと。
*5 IgGサブクラス … ヒト、マウスには4つのIgGサブクラスがある。
*6 IgGサブクラス1 … 主要なIgGの65%程度を示し、補体系に関与するとされる。
*7 IgGサブクラス4 … 主要なIgGの中で少数であり、補体系への関与が乏しいことが報告されている。
*8 mGluR1 … 代謝型グルタミン酸受容体1型 のこと。
*9 cell based assay法 … 不死化细胞株にプラスミドを用いてタンパク質を過剰発現させ、抗体の陽性と陰性を判定する検査方法のこと。
*10 免疫ブロット法 … タンパク質を電気泳動し、専用の膜に転写し、特異的な抗体を反応させることで免疫学的手法を用いて抗原を検出する方法のこと。
*11 多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA) … αシヌクレインというタンパク質がオリゴデンドログリアに蓄積し、進行性の小脳性運動失調やパーキンソニズム、自律神経症状を呈する疾患群。小脳性運動失調症の代表的な神経変性疾患である。
*12 MRI … 磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)のこと。
*2 Sez6l2抗体 … seizure-related 6 homolog like 2(Sez6l2)タンパク質に対する自己抗体であり、抗神経抗体の一種。
*3 小脳性運動失調症 … 小脳の障害により、ふらつき?めまい?喋りにくさ?歩きにくさなどの運動失調症状を呈する疾患群の総称のこと。
*4 IgG … 免疫グロブリンの一種のこと。
*5 IgGサブクラス … ヒト、マウスには4つのIgGサブクラスがある。
*6 IgGサブクラス1 … 主要なIgGの65%程度を示し、補体系に関与するとされる。
*7 IgGサブクラス4 … 主要なIgGの中で少数であり、補体系への関与が乏しいことが報告されている。
*8 mGluR1 … 代謝型グルタミン酸受容体1型 のこと。
*9 cell based assay法 … 不死化细胞株にプラスミドを用いてタンパク質を過剰発現させ、抗体の陽性と陰性を判定する検査方法のこと。
*10 免疫ブロット法 … タンパク質を電気泳動し、専用の膜に転写し、特異的な抗体を反応させることで免疫学的手法を用いて抗原を検出する方法のこと。
*11 多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA) … αシヌクレインというタンパク質がオリゴデンドログリアに蓄積し、進行性の小脳性運動失調やパーキンソニズム、自律神経症状を呈する疾患群。小脳性運動失調症の代表的な神経変性疾患である。
*12 MRI … 磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)のこと。
谢辞
本研究はJSPS科学研究费助成事業(20K16481)、厚生労働科学研究费(20FC1041)からの支援を受けて実施しました。
论文情报
论文名: Sez6l2 autoimmunity in a large cohort study(本邦における厂别锄6濒2抗体阳性自己免疫性小脳失调症のコホート研究)
着者名: 阿部 恵1、矢口裕章1*、工藤彰彦1、长井 梓1、白井慎一1、岩田育子1、松岛理明1、中村直子2、伊佐早健司3、山野嘉久3、芦田真士4、笠井高士4、田中惠子5、渡部 昌6、近藤 豪6、高桥秀尚7、畠山镇次6、竹腰 顕8、木村暁夫8、下畑享良8、矢部一郎1*(1北海道大学大学院医学研究院神経病态学分野神経内科学教室、2叁重大学病院神経内科、3圣マリアンナ医科大学脳神経内科、4京都府立医科大学脳神経内科、5新潟大学、6北海道大学大学院医学研究院生化学分野医化学教室、7横浜市立大学分子生物学教室、8岐阜大学脳神経内科)(*责任着者)
雑誌名: Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry (临床神経学の専门誌)
DOI:
公表日 2023年6月1日(木)(オンライン公开)
着者名: 阿部 恵1、矢口裕章1*、工藤彰彦1、长井 梓1、白井慎一1、岩田育子1、松岛理明1、中村直子2、伊佐早健司3、山野嘉久3、芦田真士4、笠井高士4、田中惠子5、渡部 昌6、近藤 豪6、高桥秀尚7、畠山镇次6、竹腰 顕8、木村暁夫8、下畑享良8、矢部一郎1*(1北海道大学大学院医学研究院神経病态学分野神経内科学教室、2叁重大学病院神経内科、3圣マリアンナ医科大学脳神経内科、4京都府立医科大学脳神経内科、5新潟大学、6北海道大学大学院医学研究院生化学分野医化学教室、7横浜市立大学分子生物学教室、8岐阜大学脳神経内科)(*责任着者)
雑誌名: Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry (临床神経学の専门誌)
DOI:
公表日 2023年6月1日(木)(オンライン公开)
お问い合せ先
横浜市立大学 広报课
mail: koho@yokohama-cu.ac.jp
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