高血圧の新たな発症メカニズムを解明
ー皮膚の微小血管収縮と血圧上昇の関係を明らかにー Nature Communicationsに掲載
横浜市立大学医学部循環器?腎臓?高血圧内科学の田口慎也医師、小豆島健護講師、涌井広道准教授、田村功一教授の研究グループは、同大学医学部消化器?肿疡外科学の遠藤格教授、同大学医学部外科治療学の齋藤綾教授、香川大学医学部形態?機能医学講座薬理学の北田研人助教、西山成教授、琉球大学大学院医学研究科先進医療創成科学講座の山下暁朗教授(現所属:近畿大学薬学部)、東海大学生体機能学の松阪泰二教授、Duke-NUS Medical School(米国デューク大学-シンガポール国立大学共同医学大学院)の森澤紀彦研究員らとの共同研究により、皮膚におけるレニン-アンジオテンシン系(RAS)*1の活性化が血圧上昇に寄与することを明らかにしました。
高血圧は脳卒中や心筋梗塞?心不全などの最大のリスク因子であり、今や3人に1人以上が罹患する国民病です。従来、血圧调节は主に心血管系や肾臓が担うと考えられてきましたが、本研究では、ヒト皮肤検体および遗伝子改変マウスを用いた解析を通じて、皮肤が搁础厂活性化を介して高血圧の発症?进展に関与することを証明しました。この知见は高血圧の新たな治疗戦略の开発につながる可能性があり、今后の研究展开が期待されます。
本研究成果は、「Nature Communications」に掲載されました(日本時間2025年5月29日18時)。
高血圧は脳卒中や心筋梗塞?心不全などの最大のリスク因子であり、今や3人に1人以上が罹患する国民病です。従来、血圧调节は主に心血管系や肾臓が担うと考えられてきましたが、本研究では、ヒト皮肤検体および遗伝子改変マウスを用いた解析を通じて、皮肤が搁础厂活性化を介して高血圧の発症?进展に関与することを証明しました。この知见は高血圧の新たな治疗戦略の开発につながる可能性があり、今后の研究展开が期待されます。
本研究成果は、「Nature Communications」に掲載されました(日本時間2025年5月29日18時)。
研究成果のポイント
● 高血圧患者の皮膚ではRASの活性抑制因子であるATRAPが減少。
● 皮膚特異的ATRAP欠損マウスでは皮膚RASが活性化し高血圧が増悪。
● 同マウスにおいて、皮膚RASの活性化は皮膚における微小血管の過剰収縮に寄与。
研究背景
高血圧は日本国内で約4,300万人が罹患する国民病です。国内での脳??管病死亡の最?の要因であり、2019年には年間約 17万?が??圧と高血圧関連疾患(脳卒中や心筋梗塞?心不全など)により死亡していると推測されます。また、高齢者では高血圧が認知機能障害やフレイル(身体的?認知機能の低下が見られる状態)のリスク因子となっており、その管理が重要です。現在の治療法として、食事療法や運動療法、薬物療法が広く行われており、これらを組み合わせることが高血圧の治療法です。しかし、高血圧の約90%を占める本態性高血圧*2の病态机序は未解明な部分が多く、现在の治疗法でも血圧コントロールが十分に达成されていない患者が多いのが现状です。近年、皮肤の微小环境の変化が血圧制御に関与する可能性が示唆されていますが摆1-3闭、その具体的な分子メカニズムは不明でした。
研究内容
本研究では、さまざまな血圧レベルの患者の皮肤検体および表皮の大部分を占めるケラチノサイト特异的な遗伝子改変マウスを用いて、皮肤组织レニン-アンジオテンシン系(搁础厂)の活性と高血圧の関连を検讨しました。
高血圧患者と血圧が正常な患者の皮肤组织における搁础厂构成因子発现を解析したところ、搁础厂抑制作用を有する础罢搁础笔*3の発现量は収缩期血圧と负の相関を示し、皮肤の础罢搁础笔発现が低い患者では血圧が高いことが判明しました。
そこで、これらの因果関係や分子メカニズムを検証するために、皮肤ケラチノサイト特异的に础罢搁础笔を欠损させたノックアウト(碍翱)マウスを作製し、アンジオテンシン滨滨投与により高血圧を诱导したところ、碍翱マウスでは、対照群と比较して高血圧が増悪し、皮肤特异的に搁础厂が活性化していることが确认されました。さらに、碍翱マウスでは皮肤の血流量が低下し、皮肤からの水分蒸散量が减少していることが明らかとなり、皮肤における微小血管の过剰収缩が予测されました(図1)。
これらの结果から、皮肤搁础厂の活性化が皮肤の微小血管収缩を介して血圧上昇を引き起こし、高血圧の発症?进展に寄与していることが明らかとなりました。
高血圧患者と血圧が正常な患者の皮肤组织における搁础厂构成因子発现を解析したところ、搁础厂抑制作用を有する础罢搁础笔*3の発现量は収缩期血圧と负の相関を示し、皮肤の础罢搁础笔発现が低い患者では血圧が高いことが判明しました。
そこで、これらの因果関係や分子メカニズムを検証するために、皮肤ケラチノサイト特异的に础罢搁础笔を欠损させたノックアウト(碍翱)マウスを作製し、アンジオテンシン滨滨投与により高血圧を诱导したところ、碍翱マウスでは、対照群と比较して高血圧が増悪し、皮肤特异的に搁础厂が活性化していることが确认されました。さらに、碍翱マウスでは皮肤の血流量が低下し、皮肤からの水分蒸散量が减少していることが明らかとなり、皮肤における微小血管の过剰収缩が予测されました(図1)。
これらの结果から、皮肤搁础厂の活性化が皮肤の微小血管収缩を介して血圧上昇を引き起こし、高血圧の発症?进展に寄与していることが明らかとなりました。
今后の展开
本研究成果は、皮肤を用いた高血圧リスクの早期诊断や、高血圧の新たな治疗戦略の开発につながる可能性があります。皮肤搁础厂をターゲットにした治疗法を确立することで、従来の治疗法(食事疗法、运动疗法、薬物疗法)と组み合わせたより効果的な血圧コントロールが実现でき、健康寿命の延伸に贡献できると考えられます。さらに、皮肤搁础厂の活性化を抑制する治疗法は、従来の薬物疗法に比べて副作用が少なく、血圧コントロールにおいて优れた効果を示す可能性があります。このような治疗法が确立されれば、今后の高血圧管理に革新をもたらし、より多くの患者に利益をもたらすことができると期待されます。今后は、皮肤搁础厂を标的とした临床応用にむけて、皮肤ケラチノサイトにおける础罢搁础笔减少と皮肤血管収缩をつなぐ详细な分子メカニズムを解析するとともに、皮肤础罢搁础笔の発现増强を介した新たな治疗戦略への応用を目指します。
研究费
本研究は、JSPS科学研究费(JP19K18010, JP20K22908, JP22K16247, JP23K07678, JP23K06871, JP24K10576)、一般財団法人 横浜総合医学振興財団、公益財団法人 上原記念生命科学財団、特定非営利活動法人 日本腎臓病協会 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 共同研究事業、公益社団法人 日本透析医会、公立大学法人 横浜市立大学 かもめプロジェクト、科学技術振興機構(JST)、一般財団法人 守谷奨学財団、公益財団法人 ソルト?サイエンス研究財団、公益財団法人 循環器病研究振興財団、公益財団法人 持田記念医学薬学振興財団、公益財団法人 武田科学振興財団などによる研究助成を受けて行われました。
论文情报
タイトル:Keratinocyte-specific angiotensin II receptor-associated protein deficiency exacerbates angiotensin II-dependent hypertension via activation of the skin renin-angiotensin system
著者: Shinya Taguchi, Kengo Azushima, Kento Kitada, Norihiko Morisawa, Satoshi Kidoguchi, Ryutaro Morita, Kazuya Nakagawa, Atsushi Ishibe, Itaru Endo, Keisuke Kazama, Yasushi Rino, Aya Saito, Sho Kinguchi, Ryu Kobayashi, Taiji Matsusaka, Akio Yamashita, Hiromichi Wakui, Akira Nishiyama, Kouichi Tamura
掲载雑誌:Nature Communications
顿翱滨:
著者: Shinya Taguchi, Kengo Azushima, Kento Kitada, Norihiko Morisawa, Satoshi Kidoguchi, Ryutaro Morita, Kazuya Nakagawa, Atsushi Ishibe, Itaru Endo, Keisuke Kazama, Yasushi Rino, Aya Saito, Sho Kinguchi, Ryu Kobayashi, Taiji Matsusaka, Akio Yamashita, Hiromichi Wakui, Akira Nishiyama, Kouichi Tamura
掲载雑誌:Nature Communications
顿翱滨:
用语説明
*1 レニン-アンジオテンシン系(RAS):血圧や体液の恒常性を維持する重要なホルモンシステム。アンジオテンシンIIを主なエフェクターとし、血管の収縮やナトリウム?水の再吸収を調節することで血圧を制御する。
*2 本態性高血圧:特定の原因が明確でない高血圧。遺伝的要因や環境因子、ライフスタイルの影響などが複雑に絡み合い、血圧の上昇を引き起こすとされる。全高血圧患者の約90%を占め、病態生理は未解明の部分が多い。
*3 ATRAP (Angiotensin II Type 1 Receptor-Associated Protein):アンジオテンシンII受容体(AT1受容体)に結合し、その過剰な活性化を抑制する分子。AT1受容体のシグナル伝達を負に制御し、血圧上昇や組織障害の進行を抑制する役割を持つ[4]。
*2 本態性高血圧:特定の原因が明確でない高血圧。遺伝的要因や環境因子、ライフスタイルの影響などが複雑に絡み合い、血圧の上昇を引き起こすとされる。全高血圧患者の約90%を占め、病態生理は未解明の部分が多い。
*3 ATRAP (Angiotensin II Type 1 Receptor-Associated Protein):アンジオテンシンII受容体(AT1受容体)に結合し、その過剰な活性化を抑制する分子。AT1受容体のシグナル伝達を負に制御し、血圧上昇や組織障害の進行を抑制する役割を持つ[4]。
参考文献
[1] Machnik A, Neuhofer W, Jantsch J, Dahlmann A, Tammela T, Machura K, Park JK, Beck FX, Müller DN, Derer W, Goss J, Ziomber A, Dietsch P, Wagner H, van Rooijen N, Kurtz A, Hilgers KF, Alitalo K, Eckardt KU, Luft FC, Kerjaschki D, Titze J. Macrophages regulate salt-dependent volume and blood pressure by a vascular endothelial growth factor-C-dependent buffering mechanism. Nat Med. 2009 May;15(5):545-52. doi: 10.1038/nm.1960.
[2] Wiig H, Schröder A, Neuhofer W, Jantsch J, Kopp C, Karlsen TV, Boschmann M, Goss J, Bry M, Rakova N, Dahlmann A, Brenner S, Tenstad O, Nurmi H, Mervaala E, Wagner H, Beck FX, Müller DN, Kerjaschki D, Luft FC, Harrison DG, Alitalo K, Titze J. Immune cells control skin lymphatic electrolyte homeostasis and blood pressure. J Clin Invest. 2013 Jul;123(7):2803-15. doi: 10.1172/JCI60113.
[3] Kitada K, Nishiyama A. Potential Role of the Skin in Hypertension Risk Through Water Conservation. Hypertension. 2024 Mar;81(3):468-475.
doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.123.20700.
[4] Tamura K, Azushima K, Kinguchi S, Wakui H, Yamaji T. ATRAP, a receptor-interacting modulator of kidney physiology, as a novel player in blood pressure and beyond. Hypertens Res. 2022 Jan;45(1):32-39. doi: 10.1038/s41440-021-00776-1.
[2] Wiig H, Schröder A, Neuhofer W, Jantsch J, Kopp C, Karlsen TV, Boschmann M, Goss J, Bry M, Rakova N, Dahlmann A, Brenner S, Tenstad O, Nurmi H, Mervaala E, Wagner H, Beck FX, Müller DN, Kerjaschki D, Luft FC, Harrison DG, Alitalo K, Titze J. Immune cells control skin lymphatic electrolyte homeostasis and blood pressure. J Clin Invest. 2013 Jul;123(7):2803-15. doi: 10.1172/JCI60113.
[3] Kitada K, Nishiyama A. Potential Role of the Skin in Hypertension Risk Through Water Conservation. Hypertension. 2024 Mar;81(3):468-475.
doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.123.20700.
[4] Tamura K, Azushima K, Kinguchi S, Wakui H, Yamaji T. ATRAP, a receptor-interacting modulator of kidney physiology, as a novel player in blood pressure and beyond. Hypertens Res. 2022 Jan;45(1):32-39. doi: 10.1038/s41440-021-00776-1.
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